「わたしのマンスリー日記」第20回 どんな難病でも私たちは諦めない!(その2)さかもと未明さんとの対談SP
拉致問題にかかわって
【谷川】ALSで一歩も外出できない私からすると信じられない話ですね。拉致被害者のため世界に発信しようとして歌を作ったなんて、素晴らしいです。
横田さんご夫妻の仲人で結婚されたと伺いましたが、拉致問題にどのようにかかわってこられたのですか。
【未明】2002年の小泉訪朝の前、2000年の衆議院選挙の時に、取材をかねて大阪、堺市の西村慎吾氏の応援に行き、当時の大阪府八尾市市議会議員の三宅博さんに会いました。拉致問題に熱心に取り組んでおられる方で、「これから政治について漫画を描くなら、北朝鮮による拉致問題を取り上げてほしい」と言われて、選挙後すぐに有楽町での家族会の皆さんの街宣活動に参加しました。この時が、横田夫妻にお目にかかった最初です。
当時はまだ日本政府も拉致を認めておらず、街宣活動に参加していると、ビラを受け取るどころか「そんなことあるわけないだろう」と罵声を浴びせられたりするのを体験しまして。私はそれまで拉致のことは全く知らなかったので、それを事実だと証明する資料等とても読み込んでいませんでしたが、実際に会った家族会の皆さんと話して、「この方たちが嘘をつくはずがない」と、拉致問題解決の応援を決めました。たくさんの人に「拉致問題だけは怖いからやめなさい」と言われましたが、自分が親と疎遠でずっと孤独だったので、「家族が外国の政府に誘拐されたかもしれないのに、政府が何も助けてくれないなんて、どれだけ孤独でお辛いだろう」と、応援をせずにいられなかったんです。
翌年の参議院選挙の時に増本照明さんが出馬されるのでと応援演説を頼まれ、新宿で演説した後、食事会で横田夫妻と隣り合わせて。めぐみさんと私の年齢が近いこと、めぐみさんがマンガ好きだったことから興味を持っていただき、横田夫妻とのお付き合いが始まりました。政府が認める前から一緒に活動をしていたので信じて下さり、ことあるごとに応援記事を頼まれるようになり、どんどん距離が縮まりました。
【谷川】北朝鮮による拉致問題は、国家による暴力、暴挙です。昔の言葉を使えば、国家による「人さらい」です。こんな暴挙が許されていい訳がありません。人道的に見て手口が卑劣で卑怯です。何の罪のない子どもを家族から分断し、一生を捻じ曲げてしまうことを何とも思わないということに激しい怒りを覚えますし、人間としての深い悲しみを禁じ得ません。
未明さんが拉致問題に関わるようになった背景には、未明さん自身の生い立ちや家族環境もあったと思いますが、これこそ「利他の心」です。
それにしても、日本政府の対応ははがゆいですね。拉致被害者の会が何度も陳情しても具体的な解決策は見いだせないまま。現在の国際情勢では難しいことも百も承知ですよ。いろいろ難しい問題があってそう簡単にはいかないんですよ――おそらくそんな弁明が返ってくることでしょう。そんなこともわかっている。知りたいのは政府のこの問題に取り組む「本気度」です。
私は筑波大学の最後の10年近く組織の長で振り回されましたが、その経験から改めて認識させられたのは、組織のトップに求められるのは「決断力」と「実行力」だということです。
昨年(2023年)暮れから続いた政治の裏金問題にしても、目立ったのは自己保身ばかり。これでは本気度を疑われても仕方ないですね。