青い海と空のみちのく八戸から・波動はるかに 第6回 我が “Field of Dreams”

 神奈川から北の国青森に移動して、野球人口の違いだけでなく様々な特徴が見えてきた。前者の上位チームは高校野球の強豪チーム並みの意志をもって運営されている。県単位の大会で勝ち上がって全国大会を目指すのだ。選手のスカウティングまである。明確に勝利を目指している。それ故、確かに野球レベルは高いといえる。一方では勝負を離れて、純粋に心身の健康を考え、体を動かす喜びだけで十分としているチームもある。60、70、75、80歳以上というカテゴリーもあるのだが、年齢が高いほど遊びというわけではなく、きちっと勝負にこだわり、勝ったら勝ったで喜び合い、負けたら負けたで悔しがる。それが楽しいのである。高齢者のプレーなのでミスはつきものだが、恐らく、見学できる機会があれば、皆さんの想像以上の驚くほどの動きがみられること思う。「老人力」といったのは赤瀬川源平氏ですが、年齢を重ねるということは脳内の認知と末端の手足の動きが微妙にずれることなので、実際にプレーしている身としても、感覚外のミスを犯すことがしばしばある。しかし、それを優しく許す気持ちも育つ。それが「老人力」というものだろう。またシニアの野球能に限らず、何事でも継続していると、失われてゆくものを認めざるを得ないことも多いが、自身の中に多くの能力が残されていることもまた発見するものだ。何歳になろうとも、いつでも、誰にでも、何事にも、必ずのびしろが残っているのである。

 冒頭の映画では主人公の幻影として、次々とゆかりのある人物が現れる。将来、私も誰かの夢のグランドに登場する、記憶に残る野球バカの一人になりたいものである。

上斗米治史 (ペンネーム;小出治史)
静岡市浜松天竜区出身。静岡市、横浜市でポーラ化粧品研究所員、七宝制作、保険代理店経営。日本パントマイム研究所研修生時、大野一雄、土方巽に傾倒。佐々木満、辻征信と3人で舞踏カンパニー「黒馬団」活動ほか。写真家土田ヒロミ氏、七宝家土田善太郎氏、画家佐藤泰生氏と長年交友。川崎のシニア野球3チーム時代二刀流で活躍。202312月より青森県八戸市移住。八戸市でもシニア野球2チームに加入、始動。2024年春より多文化・多世代・多言語交流館「みらいえchez Kamitomai」ギャラリー館長。八戸市鴎盟大学入学48期生。著書;「六月の田園」2008年マンマル社刊。

(モルゲンWEB20241025)

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