『共鳴力ダイバーシティが生み出す新得共働学舎の奇跡』

宮嶋 望/著

地湧社/刊

定価1,800円(税別)

どんな障害を持っていても持つ力を発揮できる社会に

 最近発表されたた学習指導要領によると、インクルーシブな学校づくりをめざすということか掲げられていた。障害を持った生徒も持たない生徒も同じように学校で生活をしていこうという趣旨である。これは文字で書いてしまえぱ簡単だが、実際に学校生活を送ろうとすると、いろいろな課題が出てくる。

 本書は、様々な困難や個性をもったメンバーが共に暮らし、自然の営みの中で働く農場「新得共働学舎」 の物語だ。共生社会の実現が現実として可能だろうかと考えなから読み進めた。

 本書に登場する人たちは、学校という枠組みの中でも精一杯やっているのだろうけれど、なかなか自分の思いと学校の思いが合致することは少ないかもしれない。しかし、新得共働学舎で生活することによって、自分のできることをできる分だけやるということを学んでいる。それが、世界最高金賞のチーズ作りを生み出し、著者の掲げる「自労自活」を実現させたのだ。

 学校ではどちらかというと自分をよく見せるためにええかっこしいになってしまうことも多いのだが、自分のスタイルで自分ができる分だけをやっているのがすごい。これは、周囲の力も大きいと思う。どんな障害を持っていようがいまいが一人ひとりが自分の持つ力を惜しげなくだせる社会があればそれでいいのだと思う。共働学舎はそのようなことを現実におこなっている。ここまで来るには並大抵ではない苦労と努力があったのではなかろうか? 教育現場を知る私にはその大変さがよくわかる。

 この先、第二第三の新得共働学舎が現れて、課題を持った人たちと一緒に生活を送ることができたらいいなあと思った。

(評・逗子市立久木中学校校長 角田 理)

(月刊MORGENarchive2017)

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