青い海と空のみちのく八戸から・波動はるかに 第9回 カレイなる市民たち、八戸市鷗盟大学の企て。
入学式の後、1年生通学日は毎週火曜日、出席表をつけ、クラス担任のホームルーム、午前・午後講義や実習が始まった。我々48期生は60歳~88歳の80名、約12名ずつ班に構成され、班長、書記、会計係など自主的に役割を持つ。班メンバーといえども初め誰が誰か、名前も覚えられない。空き時間に「ニックネームつけあって、名前覚えゲームするのはどうでしょう」と恐るおそる囁いてみると「いいね」で早速10人のニックネームが決まり、「ワンチーム(1班)」ラインも出来上がった。ちなみに夫は「ショウヘイ」私は「マリン」になった。幹夫さんは「ミッキー」、岩淵さんは「ブッチー」、由美さんは「ユーミン」等々、60歳以上の新入生同士、そう呼び合うだけでも大笑いだ。
初日に1年生全員が自己紹介することになった。緊張が走る。名簿順に前へ、ひとり2分(以内)、何故鷗盟大学に志願したか、職歴、趣味、家族のことなど、ポツポツと八戸弁で語り出す。「連れ合いに先立たれ、内に籠ってしまっていて・・一歩踏み出しました」「家人と不仲で少し離れたくて~」「娘の連れ合いが八戸の人で、お父さんお母さんもこっちに来たら~で大宮から移住しました」「朝起きると、ずっとリモコンを握ってテレビの前で夕暮れになる~」。一人ひとりの来し方の人生から絞りだす飾らないことばが私の琴線に触れて、何度も涙が零れそうになった。どの人もここまで生きてきた、皆背景は違うけれど、すくっと立って、自分の実人生を自分のことばで伝えようとしていることが清々しく感動だった。
講義は有識者、鷗盟大学卒業生講師らにより、漢詩、俳句、川柳、茶道、陶芸、パステルアート、七宝焼、和紙クラフト、水墨画、太極拳、フォークダンス、社交ダンスなど、錆びついている頭も身体も揺さぶられる。実学講義もあり、公民館活動のしくみ、男女共同参画、介護保険制度と支援センター、原燃・日本のエネルギー事情、公共交通、認知症・消費者センター、医学講座、伝統芸能(三社大祭・えんぶり)、百人一首講義と百人一首大会等、ぼんやりとしか知らなかったことに光が射す。