青い海と空のみちのく八戸から・波動はるかに 第9回 カレイなる市民たち、八戸市鷗盟大学の企て。

 入学式から8ヵ月、知人は一人もいなかったのに、班の仲間はもう家族のようだ。運動会、大学祭では担当を通じて、先輩との交流も広がる。同期・先輩といっても、80代の人も60代の人もいる。芸能祭では舞台の人も裏方の人も、誰もが自分から動き協働き、今日あることを喜び、観客に伝えようとする息吹があった。

 2年生になったら、チームでテーマを決め半年間フィールドワークを進め論文発表するという。私たちは、「何のテーマしたい?」「私は八戸市の在八外国人事情やその方々との交流の場創出案などやってみたいかな」「キミは、もっと新しいことやってみたら?」「そうだね、鷗盟大学の中身のこと、市民も、若い人も知らないし、もっと外に伝えたいね。鷗盟大学コマーシャル動画や、今時本出版するのは?」「台本か~、オレかなあ・・」「2年修了したら大学院は八戸市役所内高齢福祉課に研究実践部門を創設してもらうのはどうかなあ」と朝から話が始まる。夫は夏すぎから川柳クラブに入り、昼夜を問わずことばを編む。私は故郷に移居して設立した「多世代×多文化×多言語交流館みらいえchez Kamitomai」の活動が、予想もしていなかった人々の出逢いと共に、温かく実現しつつあることに胸が熱くなる。

 八戸市鷗盟大学の学びの場は何だろう。家に籠っている高齢者を2年間の大学に引き寄せ、8ヵ月でここまで朗らかに明るい人間に変身させる環境とは。人生経験が深いからこそ、自分から見つけて動くセンスと能力は、青年大学生にはない輝きがあるのではないか。歳を重ねれば重ねるほど人間しての魅力、発想力、発言力が素晴らしく、しかも自己中心主義ではなく、いつも他者を含んでいる。高齢者を囲い込んでお世話するのではなく、八戸市の行政として市民に開き、授業の成果は公会堂や美術館、デーリー東北新聞で公表し、また市の史跡、産業施設と連携して八戸市全体を学びの環境にしていることが凄い。加齢になればなるほどチャーミング&セクシー、アクティブだ。八戸市の企てで、八戸市から華麗なる加齢市民徘徊中~Viva!八戸アカデミア!

かみとまい まさこ 榊原陽氏(多言語活動提唱者)の言語研究・実践団体に1973年より参加。1981年言語交流研究所設立時より国内・海外で多言語活動、青少年~多世代のホームステイ国際交流、高校生交換留学の派遣・受け入れを推進。一般財団法人言語交流研究所新プロジェクト部長。ヒッポファミリークラブ研究員・フェロウ。多言語活動・国際交流、「ハルくんの虹」をテーマにワークショップ・講演講師多数。著作者、水墨画家としても活動、著書に『多言語のある日々 波動はるかに』(遊行社刊)がある。2023 年 12月15日第52回「デーリー東北賞」受賞。

(モルゲンWEB20250129)

関連記事一覧