「こころの病も心身一如の自然治癒力」―季節性うつ病から双極性障害を自ら体験して― 第9回 「病跡学」と「こころの免疫力」

 音楽家ではチャイコフスキーも躁うつ病であったといわれています。「冬の日の幻想」や「悲愴」という作品は、われわれも聴いていて、場合によってはうつの気分になりますが、本人もうつ状態であったといわれ、一方で躁うつの傾向もあったチャイコフスキーは、「鍛冶屋のヴァクーラ」というオペラを書いていたときは軽躁状態であったといわれています。

 作曲家・シューマンにも躁うつの波があったといわれており、作品の数にその波が現れています。作曲がどんどんできるのは軽い躁状態(hypomanic)のときで、たくさんの作品を生み出します。一八四九年にも非常に多くの作品があります。それに対してほとんど作品のない年がありますが、このときは重篤なうつ状態でした。 それから、自殺の企図もあったといわれていますが、こういったときにはほとんど作品 がありません。』

 さて、自死に関してですけれども、平成四年二月三日節分の日「オンザテーブルデス」の医療事故をおこし、苦心さんたんして死亡診断書を書き終え、深夜帰宅しました。私は、浴室に病院から持ち帰った点滴用静脈留置針を持ち込んだのです。 入浴中、腕の静脈に挿入しようと思い立ったからです。でも結局、試みることは出来ませんでした。このときに一度だけ自死念慮が頭によぎったわけですが、自死は誰もが絶対に避けなければなりません。

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