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和田 竜さん(作家)

 和田竜さんは歴史をモチーフにした脚本家・作家である。新聞記者を務める傍ら著した映画脚本『忍ぶの城』で城戸賞を受賞すると、同作を小説化した『のぼうの城』で作家デビュー、その後も『村上海賊の娘』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞を受賞した。が、順風なキャリアの背景には、バブル、氷河期の最中に人気職を目指し、高倍率の前に舐めた様々の想いが散りばめられている。俊才の十代の轍を訊ねた。

どんな少年時代を

 生まれは大阪ですが、それから数ヶ月も経たないうちにすぐに父の転勤で広島へ行くことになったんです。そこで中2までを過ごし、それからまた親の仕事について上京することになって。僕の住んだ広島市安佐南区は、まだ都市化が進む前の田舎町でね。市内とは名ばかりののんびりした空気の中で、特に部活やスポーツに夢中になるでもなく、毎日、友達の家に通ってはゲームをしたりプラモデルを作ったりと、ゆったりとした日常を送っていましたね。

多感な時期の環境の急変は大きかったのでは

 それが意外なほど平気でしたね。というのも、なにしろ中学3年生ですからね。周りは受験一色なわけですよ。終業のチャイムが鳴るや早く帰って勉強をするぞとばかりに、みんな一斉に帰り支度を始める。そういう意味では、人間関係に慣れるも何もない状況でしたね。そんなふうにして慌しい受験を突破すると、今度はすぐに新生活の始まって――。その頃には、高校の教室の中で真新しい顔と机や椅子に囲まれて友人ができていましたね。

その当時描いた将来の夢は

 なんとなく漠然とですが、いずれは大学を卒業するだろうし、そうしたら会社員になるだろう……、というのは、最低限の未来として見据えていましたね。そして、どうせ同じ時間を過ごすなら、就業時間を有意義に楽しく過ごせる仕事がいいな――、とも思っていて。

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