「わたしのマンスリー日記」第23回「ウォーリーをさがせ!」―勇気の波紋

「勇気の波紋」
 
 年が明けて、石井先生から一通のメールが届きました。『ALS 苦しみの壁を超えて―利他の心で生かされ生かす』の感想でした。全文紹介します。いつも通り印象に残った個所をゴシック体で表記しておきます。

谷川彰英様
 大分大学教育学部附属小学校で6年1組の担任をしている蔦谷友之と申します。前任校は谷川先生と交流を持たせていただいた大分市立判田小学校です。当時、石井真澄学年主任のもと6年3組の学級担任をしていました。谷川先生のことは、学年集会の中で石井先生から教えていただき、その生き方と心を突き動かされるメッセージに、子どもたち同様惹きこまれていった一人です。
 先日石井先生とお会いした際に、谷川先生の話になりました。谷川先生の執筆された新しい著書の中で、吉田苺花さんをはじめ、判田小学校の児童のことを載せてくださっていると伺いました。「それはぜひ読んでみたいですね!!」と話したところ、なんと後日石井先生からサプライズプレゼントで『ALS 苦しみの壁を超えて―利他の心で生かされ生かす』をいただきました! 石井先生にも、そして谷川先生にも、いつも心の宝物を与えていただいてばかりなので、お二人への感謝の気持ちを込めて感想をしたためましたので、お忙しい毎日とは存じますが、ご一読いただけると幸いです。
 私にとって、谷川先生は人生の先輩であり先輩教師。谷川先生は‶着せられた裃‶とおっしゃいますが、そのご功績は一教師である私からすると、雲の上の存在です。そんな方の生き方や考え方について知れる機会はほとんどありません。でも、谷川先生は違います。私たちに真っすぐに赤裸々に語ってくださります。
 私の大好きな祖父の家。居間の最も目立つところに「人間万事塞翁が馬」と記された書が額に入れられ飾られています。私たち家族にとって、とても特別な言葉です。谷川先生は自らの生き方で、この言葉の真の意味を教えてくださっているように感じます。
「不治の難病と言えども、人間の精神の自由を奪うことはできない」
「今日は何を書こう、どう書こうと思いを巡らしている時間は私にとっては至福の時でした」

 私は、今37歳です。大好きな子どもたちのためとは言え、正直毎日忙しいです。山口小百合先生と同様、理不尽なことでやるせない気持ちを抱えることも多々あります。心が折れそうになることも、逃げだしたくなることも何度もありました。ですが、自分の不安や悩みは、良い意味で本当にちっぽけなものだと谷川先生の言葉に出会う度に気付かされます。底力のような前向きなエネルギーを生み出す。谷川先生のメッセージは、魔法の言葉です。
 「戦友」という表現も大好きです。教師として「応援団」「サポーター」ではなく、「戦友」でありたいと感じました。苦しみを分かち合える存在、「決して一人じゃないんだよ。」と寄り添える存在、他者の幸せを自分事のように喜べる存在、それこそが「戦友」だと思います。これは、職場の同僚に対しても同様です。社会人として、働く仲間として、子どもたちを見守る同志として、「戦友」でありたい。また一つ、大切な教師マインドを教えていただきました。
 山口小百合先生との交流も、強く胸を打たれました。自分自身が抱えている悩みを、谷川先生に打ち明けるだけでなく、書籍の中で公表することはとても勇気の要ることだと思います。ですが、そのおかげで、山口先生のお気持ちにとても共感できましたし、まさに「戦友」として拝読している気持ちでした。
「私は、教頭を辞する申出を撤回しました」
 山口先生の言葉に、心からの大拍手!! と同時に、「自分自身もまだまだ頑張らなきゃ」と、勇気をもらいました。谷川先生に勇気づけられた教え子が、さらに勇気の輪を広げていく。勇気の波紋。その中心、最初の一滴が谷川先生です。
今回、「生活科魂」の中で、谷川先生が過去に大分大附属小で授業をされたことを知りました。私は、昨年度同校で2年生の学級担任をしていましたので、驚きました。前任校である判田小でも交流の機会を持たせていただいた谷川先生との繋がりに、勝手に運命を感じ嬉しくなりました。
谷川先生の著書、今後も楽しみにしています。先生にとって、新年がますます素敵な一年になりますように。

令和7年1月1日
大分大学教育学部附属小学校 蔦谷友之

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