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加藤 登紀子さん(歌手)

大学で教鞭もとられましたが、現代の若者と直に接して感じられたことは

 私が大学で教えていた時に第一次産業の大切さと魅力を話すわけですよ。でもね、「第一次産業に従事する人?」と聞くと、希望者がいないわけです(笑い)。しかも親御さんが第一次産業に従事している家庭ではなおのこと子供には継がせたくない、という感覚のようなんですね。これにはとても寂しいものを感じました。自分の仕事に誇りを持てない、親が過去の経験を伝えない、ということですから。本当は人生の蓄積はとても重要なものなんですよ。実際にテクノロジーの最先端では90歳のご老人の人生からヒントを得よう、というプロジェクトも進んでいるんですから。

そういった意味では今まさに東北で被災した子供たちは凄い経験をしながらシビアに未来を見据えているのでしょうね

 そうですね。不安を感じながらも意外と前向きな子も多いかと感じますね。こんな時だからこそ自分のしたいことをしようー探そうーという意思を感じることが多かったですね。仕事ってそういうことの延長線上にあると思うんですよ。丁度、学生時代のクラプ活動のような。私の友人でも中学生時から放送部で本格的なドラマを作っちゃうような子もいました。彼は現在もその道の第一人者ですよ。

情報が氾濫する豊かな日本社会の中で「やりたいことを見つけられない」という若者の話を良く耳にします

 現在の日本は構造的に、豊かさが一部に集中してしまう危うい現実があるんですね。これは日本が世界の中で、お金持ちになろうとすることで加速していくと思います。若者が様々な夢を持つためにも強く変革を望みたいところです。かといって既得権益は頑強なシステムで守られていますから、いっそそこから外れたところに答えがあるかもしれません。

被災した子供たちは口々に、将来人の為になにかしたい、というようなことを発言していますがこれについて

 人間は何歳であろうと、そのポジションからなにかしらのアクションは起こせるんですよ。それこそ幼児だろうと家族の構成員として必ず一人ひとりが担う役割はあるはずです。

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