
「わたしのマンスリー日記」第24回 ヘルパー・ネーミング大作戦
【完璧ヘルパー】
西山さんは当初2年ほど夜勤で入っていただいた男性ヘルパーです。西山さんのケアを受けながら、いつも「ヘルパーとして完璧だ」と思い、本人にもその旨を伝えてきました。ヘルパーに求められるのはケアの技量ですが、それに負けず劣らず要求されるのはコミュニケーション能力です。
以前お世話になった若い男性ヘルパーは来宅した時と帰る時の挨拶ができなくて愕然としたことがありました。挨拶の仕方は指導しましたが(笑)、
仕事以外のコミュニケーションは一切にないまま終わってしまいました。正直悲しかった。
利用者とのコミュニケーションをとるには、一見どうでもいい言葉がけをすることです。「今日は天気良いですね」「庭の梅が咲きましたよ」といったレベルの言葉がけで、私たちは生活者として蘇生するのです。
その点西山さんは抜群の能力の持ち主でした。今は管理職に昇進して現場には出ていないそうですが、私の外出の際はいつも駆けつけてくれます。
【安心安全ヘルパー】
西山さんと並んで感謝しているのは、男性ヘルパーの相馬さん。同郷の長野県出身ということもあって、外出時にはいつも付き添いをお願いしています。相馬さんは出発の数日前に来て準備をしてくれます。
ALSという難病を抱えての遠出の旅は、それこそ命の存亡にかかわる一大事業ですが、これまで岐阜市まで1回、郷里の松本市まで2回介護タクシーで往復することができました。妻も「相馬さんと西山さんに任せておけば大丈夫」と太鼓判を押しています。今年の9月には石川県の加賀市に挑戦です。
【ヘルパーの鏡ヘルパー】
夜勤でお世話になっている女性ヘルパーの加藤さんは、療養が始まった時からのお付き合い。利用者に寄り添ってくれる頼りがいのあるヘルパーさんです。ある晩「あなたはヘルパーの鏡だ」と文字盤で伝えたことがありました。特別な意味もなく日頃から思っていることを口にしただけですが、彼女はケアの手を止めて泣き出したのです。
少しびっくりしましたが、すぐそれが感激の余りの嗚咽であることはわかりました。何気なく伝えた一言が加藤さんに衝撃を与えたのでしょう。その一言を受け止める感受性とひたむきさに、こちらも感銘を受けました。これからもヘルパーの鏡として介護界を引っ張っていかれるよう期待しています。
【命の大恩人ヘルパー】
某年某月の日曜日の朝のことでした。前日から夜勤で入っているヘルパーの倉知さんが、「いつもは6時半には起きて台所に立っている奥さんが8時になっても起きてこないはおかしい」と言い出したのです。私はさして気にもとめず、「せっかくの日曜日なんだから、ゆっくり休ませたらいい」程度にしか考えていませんでした。
それでも倉知さんは「やはりおかしい」と言って2階の寝室に行って声をかけてくれました。でも応答はなし。そこでドアを開けてみたらそこにもいない。そこで浴室を覗いたら妻は倒れて気を失いかけていたそうです。
その報告を受けた時「今度こそダメだ」と観念したのですが、自分では何もできない。そのもどかしさに絶望のどん底に突き落とされました。
しかし、その後の倉知さんの対応は見事でした。即救急車の要請をしてくれ、5分後には救護隊が駆けつけてそのまま妻は病院に搬送されました。あと一時発見が遅れたら妻は一命を落とすところでした。倉知さんのとっさの判断で妻の命は救われたのです。命の大恩人です。ありがとうございました。
