
『戦争・平和・いのちを考える しあわせなら態度に示そうよ!』
木村 利人/著
キリスト新聞社/刊
定価1,000円(税別)
バイオエシックスの視座から戦時医学犯罪を重ねる
「しあわせなら手をたたこう」の作詞者が平和といのちを守り、戦争への動きに抗する道筋を示した本です。その根底にはバイオエシックス(生命倫理)の考え方があります。インフォームドコンセント(患者に充分な説明をした上での同意)などは、この考えに基づいていて一般にも普及してきています。
その構想に至ったのは、ベトナムでの枯葉剤の被害にふれてからでした。それはDNAを傷つける「生物学的時限爆弾」とも言われます。全く同じことがフクシマで行われています。著者はバイオエシックスの視座から戦時医学犯罪である731部隊の分析も重ねました。
「いのちの平和」の立場で、日本国憲法の価値も説かれています。特に、前文の「平和的生存権」と13条の「生命権」に注目して、「平和に生きる権利」や「いのちの権利」が語られています。そして現政権が進める集団的自衛権を認める解釈改憲の暴挙を断罪しています。使われた「積極的平和」 の本来の意味も解説されています。
バイオエシックスの基本には、自己決定の原理があります。インフォームドコンセントはその典型です。そこでは充分な説明が必要です。重要な決定であれば、なおさらです。先の国会ではそれが行われませんでした。閉会後も、経済政策で目をそらそうとしているかのようです。主権者である国民の自己決定を尊重していません。そんな中でそれを実行しているのは、シールズの若者たちです。自分の言葉で語るスピーチの最後には、自分の名前を名乗ります。
偽装に満ち、いのちを軽視する今を照らす最適の本です。
(評・埼玉県立皆野高校学校教諭 江田 伸男)
(月刊MORGENarchive2015)