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鹿島田 真希さん(小説家)

 小説家鹿島田真希さん――98年に第35回文藝賞でデビューを果たすと、2005年には第18回三島由紀夫賞を受賞、2012年には第147回芥川賞を戴冠した。その前衛的な作風が大学時代に深めたフランス文学に由来することは、ファンならずとも周知のことだが、意外にもそのルーツは中学時代、夢中になったドストエフスキーにあるという。鬼才の十代を訊いた。

小さい頃はどんなお子さんだったのでしょう

 子どもの頃はとにかく活発でしたね。小学校では陸上をやっていたんですが、学校の代表に選ばれたりしてとても足が速かったんです。それで、中学校になってもずっとリレーの選手を続けて。それが、高校に上がると心境の変化から急に読書ばかりするようになってね。当然、スポーツ大会なんかではノーマークなわけですから、これ幸いと活躍して「秘密兵器」なんて呼ばれたりして(笑い)。

当時、読まれていた本はどのような

 ドストエフスキー、トーマス・マン、マルセル・プルーストなどを中心に読んでいましたね。まず中学の三年間をドストエフスキーに夢中になって、そこからロシア正教に深い興味を抱くようになって。そしてついにはロシアキリスト教会に通うようにまでなったんです。そんなある日、教会で出会った信者の方にフランスの文学家プルーストを勧められて。そこから3年間読みふけって。

大学の進路はどんなふうに決められたのでしょう

 初めはずっと習っていたピアノをベースに音楽理論を学ぼうと音大を目指していたんです。将来は音楽雑誌なんかに寄稿できれば幸せかな、なんてボンヤリ思いをめぐらせたりしてね。ちょうど叔父が芸大の楽理科出身でしたから、相談しながら受験したんです。でも結局失敗してしまって……。それで、これはもう3年間力を注いだフランス文学しかないだろうと心に決めた。白百合女子大学の仏文科に入学を決めると、本格的に学問としてのフランス文学に取り組み始めたんです。

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