「わたしのマンスリー日記」第26回 亡き妻・憲子への想い（その1）・・・衝撃

◎我々谷川ファンが大勢先生のことを思っておりますので、お気持ちを強く持たれてください！
川﨑誠司様（筑波大学大学院での弟子、東京学芸大学教授）
◎挨拶状をいただきました。この度のことは何と申し上げてよいかわかりませんが、大変な状況の中で先生の真情がしたためられた文章は大変心に響きました。
　1月12日の「授業日」の際には奥様にもたいへんお心遣いいただきながら、そのお礼もできず非常に申し訳なく思う次第です。
　先生は奥様のためにも執筆活動を続けると書かれておりましたが、先生が困難な状況下でもしっかりと本を出し続けられておられることは、われわれにとってはもちろんのこと、世の中で同じような大変な立場におられる人々にとっても、どれほど元気を与えることになっているか計り知れないほどです。
　今後とも執筆活動をお願いいたします。
野口剛様（筑波大学大学院での弟子、帝京大学教授）
◎野口先生と新井田くんと私とでごあいさつさせていただいた折の、先生の頬を伝わる涙に、先生のご無念な想い、改めて感じ入ったところです。
　心より、お悔やみ申し上げます。
　正に「夫唱婦随」で歩んでこられた日々の中で、奥様も、先生とご一緒であったからこそのお幸せな毎日があり、また、人生を「生き切る」形で歩まれたことであったかと思われます。
　先生のお嘆きは、いかばかりかと思うばかりに存じますが、我々、教え子にとっては、先生の大きな背中があってこそ、日々、過ごしているところでもあります。
　次の書籍の出版も控えていらっしゃるとのこと、お嘆きはもっともかと存じますが、ぜひ、さらにお励みいただき、我々の「大目標」としての先生のお姿を、さらにお示しいただければ幸いに存じます。
須賀忠芳様（筑波大学大学院での弟子、東洋大学教授）
　
　筑波大学での最大の役目は研究者の育成でした。学部（学類）の授業も担当しましたが、7～8割方のエネルギーは大学院生の指導のために費やしました。今は制度が変わったようですが、筑波大学では発足当時から5年制の博士課程と2年制の修士課程の両立の制度を採っていました。修士課程でもひときわ大きい大学院に教育研究科がありました。
　その中に社会科教育コースというコースがあり、毎年30名近くの主に高等学校の教員を目指す優秀な学生を受け入れていました。本来は高度職業人としての高等学校教員要因が目的のコースでしたが、それをステップにして大学教授への道に進んだ院生も数多くいます。
　川﨑誠司君は修士課程を修了してから博士課程に入り直して私の指導の下で博士論文を書き上げた院生でしたが、私が主査を務めた13人衆の13番目で、本人は「谷川先生の最後の弟子」を自認しています。お母さんが脳内出血で大変な中メッセージを送ってくれました。
　野口剛君は元筑波大学附属高校の日本史の教員でしたが、その経験を生かして帝京大学の教授を務めています。その野口君のメッセージの中に、1月12日の「授業日」とありますが、ひと言説明を要しますね。
　前年の暮れに野口君から「先生宅に伺いたい」というメールが入ったので、「ならば当時の教育研究科の仲間を連れておいで。久し振りに飲もう」と返したのです。野口君が連れてきたのが、川﨑誠司君、須賀忠君、三橋浩志君でした。
　須賀君は福島県の高等学校で日本史の教員をしていたのですが、現職派遣の制度を活用して教育研究科で修士の学位を得たことで、東洋大学教授への道を開きました。三橋君は長く文科省の教科書調査官を務めていましたが、2025年４月より福井県立大学に教授に迎えられたそうです。
　折角集まるのだからただ飲むだけではつまらないとして、「宿題」を出すことにしました。その宿題とは2024年9月に母校の松本深志高校で行った講演について寄せられた感想を述べよというものでした。うん十年ぶりのゼミに時の過ぎるのを忘れました。

谷川 彰英　たにかわ あきひで　1945年長野県松本市生まれ。作家。教育学者。筑波大学名誉教授。柳田国男研究で博士（教育学）の学位を取得。千葉大学助教授を経て筑波大学教授。国立大学の法人化に伴って筑波大学理事・副学長に就任。退職後は自由な地名作家として数多くの地名本を出版。2018年2月体調を崩し翌19年5月難病のＡＬＳと診断される。だが難病に負けじと執筆活動を継続。ＡＬＳ宣告後の著作に『ALSを生きる いつでも夢を追いかけていた』（2020年）『日本列島 地名の謎を解く』（2021年）『夢はつながる できることは必ずある！-ALSに勝つ！』（2022年、以上いずれも東京書籍刊）、『全国水害地名をゆく』（2023年、集英社インターナショナル）がある。

（モルゲンWEB20250607）