• 十代の地図帳
  • 各界の著名人の十代の道程にその道に入る心構えやヒントを見る

柴 幸男さん(劇作家・演出家)

 柴幸男さんは、劇作家・演出家である。その手法は実に独特で、ラップやループやサンプリングなどそれまで演劇で使われてこなかった斬新な手管を次々に繰り出して観衆の舌を巻くと、数々の賞を受賞。一方で、全国各地の中学高校で演劇のワークショップを開催するなど、草の根活動にも熱を入れる。躍進を続ける鬼才を突き動かす情熱とは何か、その始まりはどこにあるのか――、十代の地図を開いた。

ご出身は愛知とか。どのような幼少期を

  名古屋の北のほう、ちょうど岐阜との県境に、一ノ宮市という小さなベッドタウンがあるんです。そんな映画館一つない静かな田舎町で、サラリーマンの父と穏やかな母、それに3人の姉に囲まれて平凡な家庭に育ちました。小さい頃特に夢中だったのはテレビやマンガで、中でも「人を楽しませる」「びっくりさせる」といった企画が大のお気に入りでしたね。その頃は、とにかくお笑い芸人に憧れていて、舞台に立って爆笑をさらう自分を夢見ては毎晩眠りについていました。ただそれも中学校に進むまでのことで、その頃になると”自分のおとなしい性格にお笑い芸人は向いていない”と気づいて。そこから今度は、脚本、演出といった分野に興味が移っていって。きっかけはテレビで観た三谷幸喜さんのドラマ番組で、作品が持つ独特の世界観と丁寧な仕事ぶりにすっかり魅了され、「脚本家の仕事をしてみたい!」と思うようになっていったんです。

脚本家を目指し、そこからどんな努力をされたのでしょう

 基本的に何かを好きになるとマニアックに掘り下げる性格なんですね。当時、まだ三谷さんの著作はあまり多く出版されていなかったしインターネットもないわけですが、それでも書店をハシゴしては三谷さんの著作をできる限りかき集め、レンタルビデオ店で三谷さん脚本のドラマを借りては繰り返し鑑賞して夢中で吸収していました。

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