
『奇跡がくれた宝物 いのちの授業』
小沢 浩/編著
クリエイツかもがわ/刊
定価1,836円
生徒の作文が心に響く
現代の日本は、昔に比べて命の危険にさらされることが少ないはずなのに、命を粗末に扱う事件が増えている。個性を大切にする時代のはずなのに、差別的な言動を耳にすることが増えた気がする。なぜなのか。
療育センターの医師である著者が中学校で実践した「いのちの授業」とは、①自分が生まれたときのことを家族1名にインタビューする ②インタビューの内容を作文にまとめる ③「いのちの授業」 で作文を紹介する ④障害児の紹介および体験をして障害について考える ⑤授業終了後、自宅で作文を家族の前で読んで返す ⑥授業の感想を書く というものである。①②に関しては私も子どもからインタビューを受けたことがある。いつもはふざけている我が子が真剣に、そして嬉しそうに聞いていたのが印象的だった。本書の中で紹介された生徒の作文も家族の愛情をきちんと受け止めた、心に響くものである。ただし著者の授業の真骨頂は④であろう。家族への感謝や命への感謝を抱いた後、障害を持った人々について学ぶことで、そうした人々にも自分と同じように家族がいて、愛情を注がれていることを知る。
自分の命を大切にする人は、他人の命の大切さもわかるはずだ。そこには差別が生まれようはずがない。 「いのちの授業」は老若男女誰にでも必要だが、受講の機会には残念ながら恵まれない。ならば、ぜひ本書でその大切さを感じて欲しい。
最後に著者が勤めるセンターの母体を創設した小林提樹氏のことばを紹介しておこう。「この子は私である。あの子も私である。どんなに障害が重くともみんなその福祉を守ってあげなければと深く心に誓う。」
(評・東京共立女子中学高等学校国語科教諭 金井 圭太郎)
(月刊MORGENarchive2015)