
中江有里さん(女優・作家・脚本家)
その後、高校生で芸能界入りをされます
仕事をしやすい環境を求めて故郷の大阪を後に一人上京し、日比谷高校夜間部(現在は廃止)に転校して。「誰しもみんないずれは社会へ出るの。あなたは人よりちょっと早いだけよ」という母の言葉に背中を押されて、東京での一人暮らしが始まりました。夜間部は、毎日きまって夕方5時に通学し、9時に帰宅する、というサイクルでした。でも、私はどうしてもこれに馴染めなくて。いろいろ思考錯誤をした結果、単位制の東京都立山吹高等学校に入学することにしました。そこまでして学生でいることにこだわったのは、早くに社会へ出て、未熟なりにその厳しさと向き合い続ける中で、一人の生徒でいられる学校という空間は私にとってとても大事な場所だったからです。仕事と学業の両立は簡単ではなかったけど、何事も粘り強く継続するのは子供の頃からの取り柄でしたし、なんとか2年かけて全単位を取得、卒業することができたんです。
高校卒業後、しばらく間を置いて法政大学の通信課程に
”大学に行ってみたい”という気持ちはずっと持っていたんです。でも、実際問題、高校を卒業するのに相当なエネルギーを費やしましたから、仕事も含めて一旦、身の回りを整理する必要があったんです。きっかけは20代後半から増え始めた念願だった書き物の仕事で、仕事をこなせばこなすだけ、自分に文学的素養やインプットが足りないことを思い知らされて。(これは一度しっかり学ばないといずれ必ず躓く時が来る。仕事と両立しながらどう学ぼうか)と考えていたときに、高校で経験していた通信制という選択肢に気づいたわけです。

大学でどんな学びを
36歳からの大学生活でしたけど、(ああ、勉強って大人になってからの方が本当の面白さが分かるんだな……)と、日々かみ締める思いでしたね。自分から学ぶ姿勢を持つと、どんなに苦手だと感じていた科目も本当に楽しめて。それに、自分で学費を支払って学ぶ人間の集中力ってやっぱり凄いんですよね(笑い)私の通った文学部は、法・経済学に比べると、いわゆる実学としての人気は低いそうです。確かに文学は即効性のある学問ではないかもしれません。しかし、長い目で見た場合、手にした作品、触れた作家の生き様や思想が助けになることは意外に多いんです。学校という学び舎でこそぜひ経験してほしいお勧めの学問ですね。