
中江有里さん(女優・作家・脚本家)
女優、歌手、脚本家として厚みあるキャリアを歩まれています
自分の本質は何も変わっていないと思うんですよ(笑い)幼い日の──、あの不器用で要領の悪い女の子は相変わらず私の中にいるんです。ただ今の私は、日々の積み重ねでしか自分を高め、表現する方法はない、それを知っているだけなんです。テレビやラジオに出演して発言することは、基本的に今の自分自身を問われることです。そうしたアウトプットの日々で大事なのは、読書によるインプットを欠かさないこと。発信だけ続けていると、どんどん自分を削られていってしまいますから。
人生の中で特に感銘を受けた人物や作品は
10代でひとり上京したので、やはりホームシックにもなりました。そんな時に出会ったのが、遠藤周作の『砂の城』でした。惜しまれながら96年に亡くなられた同氏とは、面識こそありませんが、今も「心の師」と仰いでいます。後はやはり生前お世話になった児玉清さんは師匠と言える人です。博識で熱心な読書家でした。”本を読んでいると、人間はこうなるんだ!”という見本のような人でしたね。
これから書いていきたい作品は
創作ものとそれ以外の2つのジャンルを書いていますが、創作ものは、子どもの頃に親しんだあの作文のように、自分の世界を楽しんでそれを発信していきたいと思っています。それ以外というのは書評やエッセイなんですが、これらの仕事は、私にとっていわゆる「読書のススメ」です。とにかくできるだけ若いうちから本を読んでほしいんですね。今、打ち込むことが見つからない人も、とりあえず本を読んでおけば後で必ず助けになりますし、なにより、一度楽しみ方を覚えると一生楽しめるんですから。

なかえゆり1973年、大阪生まれ。89年の芸能界デビュー以来、NHK連続テレビ小説『走らんか!』(95年)、映画『学校』(93年)など多数のドラマ・映画に出演。また、脚本家として2002年BKラジオドラマ脚本懸賞で最高賞を受賞、作家として『結婚写真』(2006年)『ティンホイッスル』(13年)の2作をこれまで執筆する等、多彩な活躍を続ける。同年法政大学通信教育部卒業。読書家として知られNHKBSプレミアム「週刊ブックレビュー」の司会を長年務め、現在も「ひるまえほっと」「あさイチ」(共にNHK系)の書籍案内に出演、東京新聞、北海道新聞、日経ウーマンオンラインにも読書エッセイを連載。
(月刊MORGENarchive2014)