『虫愛づる姫もどき』

おの りえん/著 秋山 あゆ子/絵
理論社/刊
定価1,620円

命の大切さ、生きる喜び知る

 「虫愛づる姫もどき」このタイトルを見たとき、「虫を愛する姫? 何だ。それ?」と言う気持ちで、とてもこの本に興味がわいてきました。僕が住んでいる石垣島には、本土とはまた違った虫たちが数多く住んでいます。例えば15m以上あるムカデ、手のひらより大きい蛾、外に放置したパインに群がり真っ黒で親指より大きいゴキブリなど、紹介するとつきません。僕が、この本の世界に入っていくうちに、「あーこの虫は知っている。」と思い読み進めていくと、僕が知らない虫たちの日常に新しい発見ができ、きづくとページをめくる手が止まりませんでした。

 この本には、虫たちだけではなく様々な妖精たちも出てきます。その代表的な妖精が風の妖精カギョクです。カギョクは、主人公のよりさんと共に色々な妖精や虫たちを見て回ります。その妖精たちは、虫たちと共生しているため冬をこえることができません。そのため「皆一度冬に死ぬ。だから死は恐れるに足らぬ…通り道で始まり、大事なのは死に場所だ。」 このカギョクの言葉が、僕がこの本で一番印象に残りました。今の僕たちの平均寿命は80年と言われています。しかし、虫たちは違います。短い命では一週間しかありません。僕がもしその虫だとしたら一週間でやりたい事ができるでしょうか。できるとは思えません。

 僕たちが何気なく過ごしている一週間を虫たちは必死に生きているのです。妖精カギョクの言葉でそうかんじました。僕はこの本に出会い、虫たちから命の大切さや生きる喜びを教えてもらいました。そして、更に虫が好きになりました。みなさんも是非この本を読んでください。

(評・沖縄県石垣市立石垣中学校1年 船倉 空斗)

(月刊MORGENarchive2015)

関連記事一覧