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石井 光太さん(ノンフィクション作家)

ときには危険を顧みず向かわれる心情はどのような

 僕にとっては取材地で傷を負ったり、死んでしまうことよりも、書けないことの方が恐怖なんですよ。3・11の被災地の死体安置所に行った後は半年間悪夢にうなされました。それでも、僕が取材して目で見たものは絶対に伝える必要があるこ
とだと思うし、表現しなくちゃいけなかったことだったんです。自分の受けるリスクよりも、自分が人としてやるべきことは何かを考えたときに、書くことは当然のことなんです。

最新作(2013年当時)『蛍の森』について聞かせてください

 50年ほど前に実際にあった、迫害されながらお遍路をするハンセン病患者を描いたフィクションです。学生時代から調べてきたテーマなんですが、ノンフィクションでやるには材料も少ないし、きわどい領域も含むためフィクションというかたちになりました。固い社会派の作品ばかりと思われがちですが、僕にとってはなによりも意味がある題材なんですよ。

いしい こうた 1977年 東京生まれ。日本大学芸術学部卒業。国内外の貧困、医療、戦争などをテーマに取材、執筆活動を行っている。『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『レンタルチャイルド』『地を這う祈り』『遺体』など著書多数。責任編集として『ノンフィクション新世紀』
などもある。

(月刊MORGENarchive2013)

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