
青木 佐知さん(元テレビ東京アナウンサー)
アナウンサーの倍率は大変なものだと聞きます
毎年3千人から5千人が応募して、選ばれるのはほんの数名ですからね。私自身も受かると確信を持ってやっていたわけでは全然なくて。それよりもただ自分を知ってもらおうというか……。あまり気取ったことはしないようにしていましたね。受かった後、人事の方に「君浮いてたよ」って声をかけられて。それで気づいたんですが、そういえばあの頃は水泳部が終わってすぐ、ろくに化粧もしないまま中央線に飛び乗って、濡れた髪もそのままに面接を受けていたなぁと思い出して。「そういうの君しかいないから、凄く目立ってたよ」って。それを聞いたとき、結果として水泳はダメだったけど、一つの道を懸命に頑張ったからこそ新たな道が開けたんだなって、初めて確信して。
念願のアナウンサー生活はどんな
外側から見えるキラキラしたイメージとは大違いの、睡眠時間も満足に取れない地道な作業の連続でしたね。テレビに映るのはアナウンサー生活のほんの一部で、それ以外は汽車のように現場に足を運び、取材、勉強、レポート──、ひたすらその繰り返しで。でも、一歩ずつコツコツ積み重ねるこの作業は、水泳でならした私には向いている、そんな実感も湧いてきて。取材現場でのスポーツ選手たちの反応も良好で、自分のやってきた事は間違いではなかった、そう思いました。
著書『うちの夫はメジャーリーガー』について聞かせてください
苦しみを抱えながらもメジャーリーグに挑戦し、現在の立場を獲得するまでの主人の姿、夫婦の軌跡を克明に追っています。一方で、海外に縁遠かった私が、4年のアナウンサー生活にピリオドを打っての海外生活という、新天地での新たな出会い、戸惑いなどの総てを書き記してもいます。かつて田舎町を走り回ったどこにでもいる女の子は、大人になって今、海外で生活している。誰でもどこにいても、自分が望めばどんなことも実現できる──、そんな未来や希望を感じさせる作品を描きたいと筆をとりました。海外生活の難しさ、楽しさも臨場感を持って感じられるつくりになっているので、ぜひ多くの人に目を通してもらえればと思います。

あおき さち 1983年群馬県生まれ。法政大学卒業。2006年テレビ東京入社。同局の『ウイニング競馬』司会や『ワールドビジネスサテライト』レポーターなどを務める。09年プロ野球選手の青木宣親選手と結婚し、12年夫のアメリカプロ野球リーグ挑戦に伴い渡米。以降はフリーアナウンサとして多方面に活躍中。夫・宣親選手は14年カンザスシティー・ロイヤルズで大活躍し、チームのリーグ優勝に大きく貢献した。著書に『うちの夫はメジャーリーガー』(14年)がある。
(写真:御堂 義乘)
(月刊MORGENarchives2014)
