
「わたしのマンスリー日記」第32回 加賀遠征―「史上最大の作戦」(The Longest Day) その3
妻の訃報について里中満智子先生からメッセージをいただきました。
「こんなことを申し上げるのは馬鹿げていると思われるかもしれませんが、私はいくつかの経験を通じて亡くなった方の魂が留まっていると信じています。
奥様は今もそばに寄り添って先生が駅におつきになる頃には2、3歩先に進み、待っていたふりをなさるのではと思っています。今後の先生の執筆活動をそばで見守っておいでです」
里中先生を始め多くのマンガ家の先生方とお付き合いいただくようになって、早や30数年になります。その辺については里中先生に語っていただくとして、本日はどうしても申し上げたいことがあります。それは世界に名を知られるマンガ家さんでも決して権威を振りかざさないことです。その代表格がちばてつや先生と里中満智子先生です。大した中身もないのに権威ばかり気にしている大学教授の集合体である大学に身を置くものから見ると限りない魅力でした。
マンガ界との交流は私の人生を変えました。一つ教訓を得たのは、「ストーリーマンガでは主人公(ヒーロー)が死んでしまえばマンガそのものが終わってしまう。だから主人公は死なない」というごく単純な事実です。私は昔からさだまさしファンで、カラオケの締めはいつも「主人公」でした。「私の人生の中では私が主人公だと」という歌ですが、この主人公魂が今の私を支えています。

これは昨年いただいたメッセージで、我が家の家宝にしているものです。奈央里中先生には1冊目の帯を書いていただきました。
さかもと未明さんは元マンガ家ですが、バチカンで歌ったりパリで個展を開いたり、歌手・画家としても国際的に大活躍中のマルチアーティストです。膠原病という難病を抱えながらこんな活動ができるのか伺ってみたかったので、本日のスピーチを楽しみにしています。未明さんからは次のようなメッセージが届きました。
「わたしも死を目の前にしたとき、神がくれた運命を呪いました。けれど、この試練はわたしと言う存在を神様が見つけてくださった恩寵、神に頭を撫でていただいた徴だと、思い上がることにしました。そうしないと生きられなかったから。
でも、今主人を失ったら、わたしも生きる自信がないです。先生の夫婦の縁(えにし)は、そのぐらい深かったですよね……。
先生は現代のヨブでいらっしゃいます。世界中の絶望した人々に、岩に刻むように、染みる言葉を残してください。心臓から血が滲み出る苦しみですよね。わかりますよ、先生。だから、人の心をえぐる言葉を残してください」
もうこれくらいで私の語りは終えることにします。岡田直也さんナビよろしくお願いします。お二人とも私のことは知り尽くされています。存分に語っていただけると嬉しいです
