『机の上の仙人 ─机上庵志異』

佐藤 さとる/著 岡本 順/画
ゴブリン書房/刊
定価1,512円

人に対する心の持ち方、誰かを大切に思う尊さ

 年末ならぬ年明けの大掃除の後、童話作家の机の上に現れたのは一軒の小さな家、二寸ほどの小さな仙人、そして小さな白い犬。豊かな情景描写と、穏やかでとても優しい雰囲気の中、物語は進行します。

 『コロボックルシリーズ』で有名な佐藤さとる氏が、 一九八二年の『新仮名草子 机上庵志異』を底本にして新たに誕生させた、机上で起こるファンタジーです。物語の登場人物が六センチほどのサイズで目の前に現れることを考えるだけで、胸が躍ります。その人物は大変魅力的で話し上手。かねがね、お気に入りの登場人物がミニチュアサイズで存在したらどんなに素敵だろうと夢想していた私にとって、夢のような物語でした。決して説教臭くはないのに、机上庵先生(仙人)の語る物語は、人に対する心の持ち方の大切さや、誰かを大切に思うことの尊さを語りかけてくるかのようです。

 先生のお話は、中国の奇譚集『聊斎志異』を翻案したものです。ご存じの通り中国の文化や文学は、日本に大きな影響を与えました。江戸時代には、中国の小説を用いた翻案小説が数多く生まれました。本書も、『聯斎志異」の話の骨子は変えぬまま、日本の文化・風土に置き換えられています。

 翻案小説作品といえば、高校時代に「上田秋成の『雨月物語』はね…」と授業で教えられ、読めないながら原典に触れ、中国の文化と日本の文化を同時に知ったような感覚を得た記憶があります。現在私は教える立場にありますが、不勉強でこの『聯斎志異」は読んだことがありませんでした。今後是非読んでみたいと思いますし、生徒にも本書と共に紹介したいと思います。

(評・旭川藤女子高等学校国語科教諭 柳生 裕美)

(月刊MORGENarchives2014)

関連記事一覧