
『幽霊さん』
司 修/著
ぷねうま舎/刊
定価1,944円
死者を抱く
あなたは、幾人の死者を抱いて生きているだろうか。例えば、両親。兄弟。祖父母。友人たち。知人たち。その人たちの存在は、かすかな陰りのよう。わたしたちは、自分ひとりで、気ままに、自由に、無邪気に、無知に、この平和な生活が継続するものだと信じて生きている。この社会が、死者を隔絶した存在にしてから、まだ数十年だというのに。死者を幽霊として迎えることもなくなった。同時に、死者が直面した過酷な現実と、そこを正直に生きた死者も忘れ去られることになった。
全5話中、第2話「16歳の死」を紹介する。今から六十九年前の六月三十日、アメリカは沖縄での戦闘勝利宣言をした。沖縄に米軍が上陸した戦争0 沖縄の住民の四人に一人が戦死した。生まれたばかりの赤ん坊から腰の曲がった老人までも入れた四人に一人。当然十六歳の少女キラは大空襲で焼け出され、家族六人は艦砲射撃や空襲で首里を逃れ防空壕を転々とする。逃げた場所が新たな戦場になり、戦闘が終わって廃壇になった村は死骸の山。そこで日本軍がしたことは、自分たちを守るために島民たちをスパイとして殺すこと。少女キラは、日本軍の隊長に陵辱され、赤子を出産してから自殺した。その死骸は腐敗しないで、眼から稗が生え、腹からは稲、陰部からは小豆が生えていたという。古代の神話のような話だが、この民族は死者が自分たちを守り、生かしてくれていると信じてきた。
死者は生者を温かく抱いてくれる存在だった。だからこそ、私たちはより多くの死者たちをしっかりと抱く必要がある。過酷な現実と向き合い、未来の子どもたちを信じて生きた彼らを抱く時、今するべきことがはっきりと見えてくると信じて。
(評・福島県立本宮高等学校講師 立花 正人)
(月刊MORGENarchives2014)
