『ほんとうの自分を求めて』

姫田 忠義/著
クリエ・ブックス編集室/刊
定価1,575円

”人生とは旅だ”の実践記録

 ドキュメンタリー映画監督の故姫田氏の自伝である。民俗学者の宮本常一氏に師事し、日本各地を旅して伝統文化を映像で記録した。氏の人生も旅の連続であり、それがこの自伝にも記録され、「人生とは旅だ」の実践記録になっている。

 旅は他火、別火とも言われ、家族と離れて暮らすことであるという。一方、旅は神や人や食物と自分とのつながりを示す言葉だとも。それは、よりよく生きたいという願望につながる。氏のこの自伝は、これらの全てを含む自分探しの旅のエッセンス集になっている。映画では「ロードムービー」と言われるが、これは「ロードストーリー」である。

 少年期最大の旅として、兵隊として戦争への参加も経験する。そして、大きな転機となったのが、民俗学者の宮本氏との出会いであった。宮本氏の話に出てきた対馬へのひとり旅が、人生の出直しのための大きなステップとなった。そこで、黙って人の話を聞いているだけの役でも、人の助けになることを発見する。このことが姫田氏の映像人類学者としてのスタンスとなる。戦後、高度経済成長期を境に急速に失われた日本の文化が映像で記録されていく。

 その生き方や考え方は、震災と原発事故後、再評価されつつある。未来へつなぐ大きなヒントがある。そこには、自然から聞いた学問がある。特に、萱野茂氏から学んだアイヌの人たちの考え方が印象的である。自然の中で、人びとがお互いに対等に暮らす平和な社会が理想という、アイヌの人たちの考え方は、憲法の前文や9条につながる。

 真に持続可能な世界を創る指針が示された未来への旅の書である。

(評・埼玉県立皆野高校教諭 江田 伸男)

(月刊MORGENarchives2014)

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