『学校英語教育は何のため?』

江利川 春雄、斎藤 兆史、鳥飼 玖美子、大津由 紀雄/著、内田 樹、鳥飼 玖美子/対談
ひつじ書房刊
定価1,080円

英語教育の原点を考えるきっかけに!

 学校英語教育の目的とは一体何なのか。近年、このような疑間を持っている現場教員は少なくないだろう。政府はグローバル人材育成を掲げ、新学習指導要領の下で、英語教育の締め付けを強化している。教員は、現場の実態と新学習指導要領の間で日々、悪戦苦闘している。このような現場教員に対して、学校英語教育の原点をあらためて考えるきっかけとなるのが本書である。

 本書では、江利川春雄(和歌山大学教育学部教授)、斎藤兆史(東京大学大学院教育学研究科教授)、鳥飼玖美子(立教大学特任教授)、大津由紀雄(明海大学副学長・外国語学部教授)という英語教育界において著名な4名の先生方が、学校英語教育の在り方について、教育現場の視点から鋭く論じている。そしてこの4名に共通するのは、学校英語教育は公教育であり、グローバル人材と呼ばれる一部のエリートを作り山すためのものではないとの考えである。さらに、学校英語教育の本来の目的は、単なる英語の理解ではなく、自分達の母語を相対化し、理解を深めることであると論じている。この考えは、英語の授業はすべて英語で実施という縛られた意識の中で指導に苦悩している現場教員に勇気を与えるものだ。

 また、後半の内田樹(神戸女学院大学名誉教授)と鳥飼玖美子教授による学校英語教育についての対談は、英語教育の問題点を取り上げるだけではなく、シンガポールやベトナムなど他国の外国語教育を例に出しながら、母語教育へ与える問題についても熱く意見を交わしており、読み応えがある。

 日々の英語指導で苦労している現場教員や英語教員を志している方にぜひ読んでもらいたい一冊である。

(評・浦和学院高等学校英語科教諭 林洋平)

(月刊MORGENarchives2014)

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