『ほんとうのじぶん』

石津 ちひろ/詩  加藤 久仁生/絵
理論社/刊
定価1,404円

子どもが教えてくれたこと

 皆さんは、言葉が心にしみ込んでいくような詩に出会ったことがあるでしょうか。

 この詩集は、やわらかな言葉で書かれています。

 「音」や「香り」、「味」が、五感と心を満たしていく。大人になっていく子どもの、今しかない時間を織細に描いていく。そんな優しい詩がつまっています。

 この詩集で一番好きな詩を紹介します。「わたしもいつか」ーこの詩に登場する兄妹は、ある老婦人に「ふゆのあおぞらのようなうつくしさ」を感じ取っています。それは、婦人が自らを美しく見せようとした結果ではなく、年月を重ねていくことで自然に生まれたものだと思います。その美しさを感じることができた二人の心の豊かさが、私の心にすっとなじんでいきました。

 子どもらしい 「ふゆのあおぞら」という言葉。私は、目に映るものを純粋に捉えられる兄妹の心に感動し、言葉は、読むたびに私に変化をもたらしました。心をやわらかくし、受け入れる心に変えていくのです。私もこの兄妹のように純粋にものごとを捉える心を持ちたいと思いました。

 「子ども」という尊く大切な時間ー老婦人にも私たちと同じ子どもだった日があったはずです。きっとそこから始まったのです。だから私も年を重ねる度沢山のことを純粋に深く見つめられたなら、なれるのかもしれません。あの婦人のように「ふゆのあおぞらのようなうつくしさ」を持った女性に。

 『ほんとうのじぶん」に収められた二十八篇。皆さんの心に響くのはどの詩でしょうか。やわらかな言葉と豊かな子どもの表情がきっと何かを残してくれると思います。

(評・東京都葛飾区立青戸中学校3年 穴沢 夢乃)

(月刊MORGENarchives2026)

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