『刑務所しか居場所がない人たち 学校では教えてくれない、障害と犯罪の話』
山本 譲司/著
大月書店/刊
本体1,500円(税別)
社会から排除され居場所のない人たち
「刑務所しか居場所がない人たち 学校では教えてくれない、障害と犯罪の話」。なるほど、そういう人たちがいるのか。そう思わせるには、このタイトルは十分だ。
筆者は、元衆議院議員で元受刑者。2000年に秘書給与詐取事件で懲役1年6ヶ月の実刑判決を受けた。本書は、刑務所に服役していた時のことを元に書かれている。
本書によると、刑務所の中では「懲役作業」という「仕事」をしなくてはならない。筆者に与えられたのは、障害や病気のある人たちの世話係。障害や病気のある受刑者は「寮内工場」という通常とは離れた場所で、ロウソクを色別に分けるといった作業を行う。彼らには「駐車中の車から30円を盗み、窃盗犯として逮捕」などの軽微な犯罪が多いそうだ。刑務所から出ても社会から排除されて居場所がなく、軽微な犯罪で刑務所に戻る。まさに「刑務所しか居場所がない」のだという。
このような状況を目の当たりにして、筆者は「獄窓記」(新潮社、2003年発行)を出版する。その後も「累犯障害者」(同社、2006年発行)等、障害者と刑務所の実態を描いた本を執筆してきた。今回の本書は、同内容で中高生向けに分かりやすく書かれたものである。本書は読みやすいが、あらゆることが「さらっと」書かれており、もう少し掘り下げても良いのではという印象を持った。しかし、そう思わせることこそが本書の狙いであり、より深く知るための入口という意図をもっているのであれば、大成功ではないだろうか。
(評・白梅学園高等学校司書 森 なを子)
(月刊MORGENarchive2018)