『リベラルアーツ「遊び」を極めて賢者になる』

浦久 俊彦/著

集英社インターナショナル/刊

本体880円(税別)

教養としてのリベラルアーツではなく生きるための羅針盤として

「リベラルアーツ」という言葉をよく耳にするようになった。日本語に直すと「教養」という言葉がよく使われるが、解釈は人それぞれであるのが現状である。そのような中、筆者はリベラルアーツを「人生を遊び続けるためのわざ」と説明している。もちろんこの「遊び」は「ゲームで遊ぶ」というようなことではなく、「人生を楽しんで生きる」ということを意味している。

 それでは、どうすれば「人生を楽しんで生きる」ことができるのであろうか? 筆者はそのために身につけるべきことこそが、リベラルアーツであると説明し、リベラルアーツとは、世界を読み解くための方法であり、世界を語るための言語であると表現している。

 本書は「リベラルアーツを知る」「リベラルアーツを遊ぶ」「リベラルアーツを活かす」の三部から構成されており、第一部では古代ギリシャの四科、古代中国の六芸、リベラルとアートを分析し、第二部ではいかに人生を遊び続けるかの視点で、江戸から、本の世界から、仕事からと幅広く論じており、第三部では未来をつくるために必要なことを筆者の提言として書かれている。

 これからの社会に必要なことは、想像力と創造力であり、それがイノベーションにつながると指摘。また「考えることは生きること」であり、「教養としてのリベラルアーツではなく、生きるための羅針盤として考えるべき」とメッセージを送っている。

 変化が激しく、行く先が見えない現代社会において、自らの「地図」を描く力が求められる時代に突入した。コロナ禍において混乱が続く現在にこそ読んでもらいたい一冊である。

(評・東京都立田園調布高等学校教諭 宮崎 三喜男)

(モルゲンWEB2022

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