『14歳からの個人主義 自分を失わずに生きるための思想と哲学』

丸山 俊一/著
大和書房/刊
本体1,500円(税別)

探していた「自分の形」が本の中に

 本書の大きな主題にもなっている「個人や自分を尊重する」という動きはこの数年、社会全体でも顕著になってきていることを私自身も感じていました。ただ、その「尊重する」とはどういうことなのか。「自分を大事に」という声はよく聞くけれども、それは一体何をどうすれば自分を大事にできるのだろう…。そんなふうに、具体的なものは何も掴めないまま、表面的な言葉が自分の中で漂っているだけでした。

 「個性を大切にね」「自分を失わないで」とは言うけれど、誰も「そのためにどうしたらいいか」は教えてくれない。それを掴むためのヒントさえも見つからない。

 そんな中、この本では「自分を失わないためにどうすればいいのか」が本当に丁寧に示されており、強く胸を打たれました。夏目漱石やフロムといった先人たちが探し当てた考え方を細やかにやさしくほどいていく文体は、私のような中高生でも内容を自然と心の中に取り込むことができるように促してくれているようでした。

 「個」が持つ魅力や可能性に世の中がスポットをあてるようになったのは、ごく最近のこと。まだまだ同調圧力の嵐はどこにでも現れているのを感じます。そんな心を締め付けるような嵐の中に身を置いてしまったとき、またこの本のページをめくって、今の自分が大切にしたいことをゆっくりと確認しよう。読後はそんな気持ちの余裕が生まれていました。

 ぜひ一度、この表紙をめくってみてください。きっと、探していた「自分の形」をどこかに見出すことができると思います。

(評・都立南多摩中等教育学校4年 野口 夏葉)

(モルゲンWEB2022)

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