『「未完成」なぼくらの、生徒会』

麻希一樹/著 新井陽次郎/イラスト
KADOKAWA/刊
本体1,000円(税別)

眩しいだけじゃない青春物語がここに

 この物語の主人公は、最近男子校から共学になったばかりの神南高校(=神高)で生徒会のメンバーとして集まった4人である。「普通」の女子高生になりたくて神高に来た葵、生徒から慕われているが性格にちょっと難ありな生徒会長の晴人、晴人の「飼育係」をしている強面だが優しい由紀、イケメンでモテるが素顔を明かさない悠真。4人はそれぞれ過去に結びつく秘密を持っている。

 章ごとに物語の主人公が変わり、あのときこうしていたらと後悔し続けていたり、誰にも本音を言えずひとり苦しんでいたりする4人がそれぞれの秘密でもある過去を乗り越えていく過程が描かれている。 ひとりが過去に向き合うとき、生徒会の仲間たちが背中をそっと押しているところに、4人の信頼関係が見出せる。ラストに向かうにつれて少し大人になった生徒会のメンバーは、長い間果たされなかったある約束と向き合うことになる。

 この本を読み終えたとき、ほーっと長いため息が出た。「青春」とは何かよくわからず、漠然ときらきらしたイメージを持っていた私は、それとは趣が少し違う、作者の考え方に共感できた。悪気がないのに人を傷つけたり、傷つけられたり。勇気を振り絞ってもうまくいかなかったり。未完成だからこそ痛々しく、それが綺麗でもある。青春に輝きばかりを求めなくてもいいとわかったとき、温かい気持ちに包まれた。

 青春は輝いているものと考える人にこそ読んでほしい。この話を読んだあと、「青春」のイメージが少し変化していることだろう。

 眩しいだけじゃない青春物語がここにある。

(評・青翔開智高等学校1年生 前田 のぞみ)

(月刊MORGENarchive2019)

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