『ホーキング、自らを語る』

スティーヴン・ホーキング/著 池 央耿/訳 佐藤 勝彦/監修

あすなろ書房/刊

定価1,512円(税別)

障害に邪魔されず仕事に打ち込むこと

 「ホーキング博士」という名前を初めて聞いたのは中学生の頃だったろうか。「アインシュタイン以来の天才物理学者だ」「難病で車いすに乗っているらしい」とは聞いていたが、実際テレビで姿を見たときは、やはり驚いた。パソコンを使って話す姿はまるでSFに出てくる博士のようで、シンセサイザーから発音される言葉は、子供心に宇宙の神秘や未来を感じさせてくれた。今でこそ「ビッグバン」や「ブラックホール」といった言葉は小さな子どもでも知っているが、それは博士の出現が大きかったように思う。

 この自伝は幼少期から現在までの博士のプライベートや業績を記したものである。正直に言うと物理は学生時代に最も苦手だった教科であり、研究についての部分は理解できないことばかりで、同僚の理科教諭に説明してもらってもピンと来ないこともあった。しかし、わからないところはさらっと読み飛ばしてもいいのではないか。この本の眼目はあくまで「人間ホーキンス」を書くことにある。3人の子どもと楽しげに写真に写る姿、病気のことや二度の離婚の苦難を淡々と語る姿、研究上の理論証明の正否を賭け事にして、仲間に馬鹿な贈り物をする姿は、「物理の神様」とは別の魅力にあふれている。

 障害のあるなしに関わらず、博士の「豊かに恵まれた人生だった。障害者は自分の欠陥に邪魔されない仕事に打ち込めばいい。できないことを悔やむにはおよばない」という言葉に励まされる人は多いのではないだろうか。

(評・共立女子中学高校 国語科教諭 金井 圭太郎)

(月刊MORGENarchives2014)

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