
塚本 晋也さん(映画監督・俳優)
卒業後はCM制作会社に
最終的には、やっぱり映画の道に進みたいという気持ちはありましたが、その当時、既に、助監督になるという道が閉ざされていたんです。また僕自身、「助監督になる」というのになにか魅力を感じなかったというのもあった。それで、そのころ尖った鋭敏な感覚のNCMを多く手がけていた会社に針路を定めたんです。
映画の一番の魅力は
小学校のころ、授業が好きじゃなかったのでいつも妄想ばかりしていた。苦しみから逃れるため、自分の頭の中だけ身体から外して、好きなことを考える。……そう、例えば怪獣だったりだりだとか(笑い)。妄想は、頭にあるうちは意味もかたちもなさないけど、その没入を映画にすると、お客さんが喜んでくれて。それに気付いたときに、人とのコミュニケーションが急に出来た気がして、世界が急激に広がったんです。またそれが、映画を海外に持って行く機会を得たものですから、コミュニケーションの輪が日本を飛び出すわけです。映画の持つコミュニケーションのリーチ、そこに自分の意義と存在を認めたらもうやめられませんよ。
映画『沈黙』について聞かせてください
ちょうど2015年に大岡昇平さんの『野火』を撮り終えていて。だから、いまは自分としては重要な2本が完成した凄い時期なんです。『野火』、『沈黙』に共通するのは、人間の自由な意志が、いつの時代にも、上から、ある種の力で抑えつけられる。それもただ口で抑えつけるわけじゃなくて、必ず暴力がつきまとう。なんで、どうしてそんなに暴力がつきまとわなきゃいけないんだ、という不条理を描いていると思うんです。『沈黙』は、とくに宗教的な側面も色濃いなど、もちろんそれだけではないんですが、この不条理はくっきりと描かれています。『沈黙』で演じた、隠れキリシタンの百姓『モキチ』が、壮絶な殉教を遂げる場面では、僕自身は特定宗教はないので、あくまでも自由な意志を抑えつける圧政への叫び、未来の子孫への祈りというように、虐げられた人々が、いろいろなものを爆発させたと考え、そう置き換えて演じました。多くの場面で人生の普遍性を感じさせる作品です。ぜひ多くの方に劇場に足を運んでいただければと思います。
つかもと しんや 1960年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業。88年『電柱小僧の冒険』でPFFアワード・グランプリを受賞。89年、劇場映画デビュー作となった『鉄男』でローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリを受賞。主な作品に『東京フィスト』、『バレット・バレエ』、『双生児』、『六月の蛇』、『ヴィタール』、『悪夢探偵』、『KOTOKO』、『野火』など。俳優としても自身監督作のほとんどに出演するほか、他監督の作品にも出演。『殺し屋1』『シン・ゴジラ』『沈黙―サイレンス―』などがある。 出演最新作『沈黙―サイレンス―』 17世紀、江戸幕府による激しいキリシタン弾圧下の日本。安否不明となった高名な宣教師フェレイラを求め、弟子のロドリゴらが長崎へと渡航する。そこで目にしたのは、想像を絶する弾圧と、隠れキリシタンとして信仰を守り続ける人々の姿。やがてロドリゴらにも幕府からの弾圧の手が及び、信者の命と引き換えに棄教を迫られるのであった。遠藤周作の『沈黙』を世界的巨匠マーティン・スコセッシ監督が映画化。
(月刊MORGENarchives2017)
