中島 ノブユキさん（音楽家）

　映画『人間失格』、『悼む人』、ＮＨＫ大河ドラマ『八重の桜』……、網膜に焼き付く映像の残照がまだ瑞々しい人も多いだろう。これら作品の劇中音楽を手がけるのが音楽家・中島ノブユキさん。作曲、編曲、演奏、プロデュース――マルチな才能で、多彩なジャンルの音の世界を表現する。俊才の歩んだ十代を訊ねた。

群馬のお生まれですね

　群馬県安中市――群馬を観光する方々がイメージする、いわゆる「山間の温泉地」よりは、やや里山……、少し足を伸ばせば磯辺温泉の湯気を感じることができる、そんな街で幼い時期を過ごしました。

幼い頃から音楽を

　実家は代々文房具家を家業にしていましたが、父は演歌の作曲家、祖父は社交ダンスを教えていた。そんなふうですから、家の中では、いつも自然に音楽が流れていて。マンボにチャチャチャ……、ラテンの音楽が、庭で稽古をつける祖父の教室から風に乗ってやってくる。演歌を書く父の好みも、やはりタンゴなどラテンの音楽で、幼い私は全身にラテンのリズムを吸い込んでいました。

その頃興味の中心は

　テレビ音楽に惹かれていました。ブラウン管からコンバットマーチ(応援曲)が流れると、急いでピアノに向かい、見よう見まねで弾いてみる。小学校４、５年の頃には映画『犬神家の一族』のメインテーマにはまり込み、一生懸命お小遣いを貯め、ついにレコードを手に入れた。中学生が近づく頃になると、姉の奨めで『イエロー・マジック・オーケストラ(ＹＭＯ)』を手に取り、それからしばらくは虜になっていました。