前田 司郎さん（劇作家・演出家・俳優・小説家）

　前田司郎さんは、劇作家・演出家・俳優・小説家である。多岐に渡るその活躍の核にあるのは大学在学中に立ち上げた劇団「五反田団」。幼い頃に見つけた「書く」才能、演劇に魅了された青春時代、品川の工場地帯に生まれた少年はいかにして芸術の道に入ったのか――、十代の轍を訊いた。

東京のご出身ですね

　今ほどビルはありませんが、すでに工場地帯として会社と平屋の民家の乱立する、品川区の五反田で幼い時期を過ごしました。工場を営む実家の近くに住む従兄弟のマンションの駐車場や、少し歩いた先にある原美術館の傍の公園で、よく遊んでいたのを憶えています。

小学校になると早くも小説を書かれます

　子供の頃からしゃべるのが得意だったんです。しゃべるのが上手なら、書くのも得意だろう、そう思って、じゃあ小説を書こう！　と。後になり、しゃべることと書くことは全く違うんだと気付きますが、最初は全然気付かなくて（笑い）。

読書はお好きだった

　そうですね。ただ、わりと平均的な読書好きで、飛びぬけて読んでいるとか、そういうことではなかったですね。父親が読書好きなんですが、やはり同じように普通の読書家でした。