
朝原 宣治さん(北京400メートルリレー銅メダリスト)
陸上に打ち込む姿を見て、ご両親の反応は
昔から本当に両親は何も言わずにただ見守ってくれていて。僕の意思をいつも真っ直ぐに尊重してくれました。特に印象に残っているのが中学校のハンドボールのときで、すごく応援はしてくれるんだけど、高校であっさり辞めるとなってもそこは意見はしない。普通だったら、「全国まで行ったのにもったいない」とか絶対止めるじゃないですか。オリンピックに出てからも変わらなくて、相変わらず喜んで応援には来てくれるんだけど、やっぱり何かに対して道筋をつけようとはしないんですよ。
陸上で一番大事な事は
陸上にはどうしても記録がついてきますから、まずはやはり記録に対するモチベーション──、それにはいかにライバルを意識するかが大事です。あとは常に新鮮な気持ちで競技と向き合うよう練習を工夫する。飽きてしまうと力って出ませんから。特に冬の練習は、陸上競技の選手にとってとても重要ですが、同時にすごくきついんです。去年と同じ練習をまた今年もやるのかと思うと誰しもゾッとする。それを少し方向性を変えてやることで”今年はこういう練習をやるぞ”と前向きになる。そして春に出る結果を想像してワクワクするんです。僕も、そうしていつも自分を駆り立てるようにしていましたね。

陸上は素質と努力どちらが大きいとお考えですか
スポーツ学の権威にその話を聞いたところ、遺伝が4割だと言っていました。残り6割は環境だと。確かに、オリンピック選手になろうと思ったら、やはりそのくらいの素質はなきゃダメなんだけど、高校のときに身体能力は高くても怪我に泣かされたり、練習を投げ出す選手を沢山見てきてもいて。だから、素質をちゃんと磨けるような環境や、飽きずに努力を継続できる性格だとか、一流を目指すにはいろんな要素が必要だとは思います。
陸上弱小国の時代を経て、今、リレーでは日本は押しも押されぬ強豪国です
先輩の失敗を丁寧に分析し、修正を繰り返してきたことが実を結んだのと、なにより近年は個人の力がすごく伸びてきています。それでも、リオ五輪では、よく4人のメンバーがトップコンディションで揃ったと思いますね。怪我や調子を落としたりと、なかなかうまく揃わない事が多いですから。
これから陸上を目指す若い世代に向けてひとこと
リオのリレー銀メダルを多くの子どもたちも見ていたことと思います。東京オリンピックという近しい目標もありますから、自分もああいう舞台に立ちたい、トップを狙いたい──、そういう憧れを持ってくれたら嬉しいですね。あとは、陸上以外にも沢山のことに興味を持ってほしいと思います。僕自身、36歳まで現役生活が出来たのは、いろんな情報を集めることで多角的な考え方を持っていたことが大きいんです。スポーツは人生を豊かにしてくれますが、小さい頃からそれ一本でやってきて、スポーツが人生そのものになっちゃうと辛いかな、と思うので。もちろんそうやって成功する選手もいますが、ほんの一握りですから。ヨーロッパの選手と話すと、スポーツは自分の一部分にすぎないという考え方を頻繁に耳にします。ですから、視野を広く持って成長してくれたら、そう願っているんです。
あさはら のぶはる 1972年、兵庫県生まれ。同志社大学卒業。93年、陸上100メートルで日本人初の10秒1台となる10秒19の日本記録を樹立。その後も日本記録を3回更新し、日本人初の10秒0台選手に。オリンビックには96年アトランタ大会より4大会連続出場し、2008年北京大会の4×100メートルIJレーで銅メダル獲得。同年9月現役を引退。現役時代の自己記録は100メートル10秒02(日本歴代3位)、走り幅跳び8.13メートル(日本歴代5位)。現在は大阪ガス陸上競技部マネージャーとして後進の指導にあたり、自身のスポーツクラブNOBY T&F CLUBも主宰している。
(月刊MORGENarchives2016)
