
『浜人の森2011』
及川 和男/著 小坂 修治/さしえ
本の泉社/刊
定価1,470円
人間と自然のあたたかい生命感
本州最東端に位置する重茂半島では、浜に生きる人たちを「浜人」とよぶ。この本では、浜人たちの生きる姿が、三百年間重茂を見守ってきた一本のケヤキによって語られている
東日本大震災により震災孤児となった少年、洋人。洋人は悲しみに耐えられず泣きながらケヤキのもとへ行く。ケヤキと洋人は不思議なことに、互いの声を聴くことができる。ケヤキは洋人の悲しみに寄り添いつつ、生きることの意味を洋人に教える。
ケヤキは過去に三陸海岸を襲った大津波も見てきた。大津波を経験してもすぐに忘れ、再び浜辺に家を建てようとした人間の過ち。その過ちを繰り返さぬよう後世に残そうとした一人の人間がいたこと。今まで重茂がどのようにして守られてきたかを、ケヤキが語り部となって伝えている。
なぜ僕と姉だけが残されたのか。父と母に会いたい。そのような思いが渦巻いていた洋人だったが、ケヤキと話すうちに心が動いていく。過去のことを思い出してつらい思いをするのではなく、希望を持って自分が何かをすることで未来に一歩踏み出すことができる。洋人はそう気付いた。
このお話に東北の方言が用いられていることは大きな特徴だ。地震・津波という悲しい出来事が語られているが、方言を使って話す形式により、人間と自然のあたたかい生命感を感じることができる
人間のカではどうすることもできないような自然の力に立ち向かう浜人たち。自然災害は将来も起こり得るものである この本を読めばきっと、悲しい記憶から目をそらさず、今何ができるかを考えようという気持ちになるはずだ。
(評・兵庫県 小林聖心女子学院中学校3年 鈴木 奏)
(月刊MORGENarchives2014)
