『18歳までに知っておきたい法のはなし』神坪浩喜さん
3年後に迫る18歳成人、着々と進む法整備に学生の意識は追い付いているか――、そんな憂いを払うのが今冬、みらいパブリッシング刊行の『18歳までに知っておきたい法のはなし』。競争のオーバーフローが目立つ昨今、著者で弁護士の神坪浩喜さんは、憲法の謳う「個人の尊重」ある温かい社会を思い筆を執った。人に喜んでもらえるのが弁護士の醍醐味……、相好を崩す有徳の士に話を聞いた。
出版のきっかけは
ここ16年ばかり、弁護士と並行して法教育活動をやってきたんです。法的なモノの見方や考え方、正義や悪といった基本的な知識を、「出前授業」という形で小中高の現場に行って伝える。学生を弁護士会館に招いて、模擬裁判、模擬調停を体験してもらう……、そんなことを続けるうち、そろそろコレをまとめておく必要があるんじゃないか、と感じ始めた。というのも、授業を経験できるのは、ごく一部の限られた生徒たちだけです。それ以外の子たちにも、何とかして伝えたられたら……、そんな思いから出発し、じゃあ「読む授業」ならどうだろう、と。
法教育活動の契機は
「法」と聞くと、どうしても若い人たちは、「難しい」と敬遠しがちなんです。中高から始まる公民では、法の中身こそ憶えるものの、その成り立ちや存在意義には一切触れない。本来、自分に引き寄せて考えるのに必要な部分がそっくり抜け落ちるから、当然、取っつきにくくなる。今の社会は、SNSを介して容易に見ず知らずの他人と繋がれます。悪い大人と素直な子ども、という構図が凄く多くなっている。よく法を知らずに騙されて、まんまと多額のペナルティーを支払うなんてケースもとても多い。そうならないように、ちゃんと自分の頭で考えて慎重に判断し、場合によっては契約を解除する。例え、権威ある人の発言でも、簡単には鵜呑みにしない根のある思考力を育てたいと考えた。もう一つは、現代の他者とのコミュニケーションが、あまりに短絡的になり過ぎていると思ったからです。他人を敵、味方の二つに分けて、敵と見なせば排除、断絶する。そうじゃなくて、例え自分と全く違う考えでも、一旦は意見を聞きながら自分の頭で考えて、取り入れるものは取り入れる。キチンとした対話のできる人づくりを目指して始めた。