伊達 深雪さん(京都府立久美浜高等学校 学校図書館司書)

「体験で読ませる図書館」

 本校は今年4月、新たに京都府立丹後緑風高校久美浜学舎として開校しました。2,3年生は久美浜高校生なので、ひとつの校舎・学校図書館に2つの学校の生徒が通います。全校生徒は200名弱と少ないですが、その分、ひとりひとりの成長に寄り添う図書館運営で、実り多い高校生活をサポートします。

 学校図書館は、一番端の校舎の3階にあり、残念ながら「なにかのついで」に立ち寄ることはありえません。忙しない学校生活のなかでも時間を見つけて足を運ぶ価値があると思わせたい、本校の図書館づくりのコンセプトは「体験で読ませる図書館」です。一度来たらまた来たくなる、居心地の良い空間を創出し、余暇があれば図書館に足を運ぶ習慣を身に付けたなかで、様々な本や人との出会いから自然と学びをえられる、そんな学校図書館を目指しています。

本+物 ホンモノに学ぶ

 2017年、国際子ども図書館から海外43カ国の絵本をお借りして「絵本で知る世界の国々」と題した企画展を開催した際、読めない言語の本を手に取ってもらうために、「想像翻訳コンテスト」を企画しました。イラストの印象から、勝手にストーリーを想像してみよう!という企画です。すると、その後、図書館に来ても書棚に並ぶ背表紙を眺めるだけだった生徒達が、とても気軽に本棚の本を手に取るようになったことに気がつきました。「さわっていいよ」と背中を一押しすることが、それまでの本校図書館には足りなかったのかもと思い、体験を伴う読書の推進に舵をきりました。地域のありふれた鉱石や落ち葉を集めて、本で調べたり顕微鏡で観察したり、貝合わせや香合わせなど文学に登場する遊びを実際に体験してみたりすることで、読書で得た知識や想像を補います。LLブックや布絵本などの多様な形態の本に触れたり、アイロンビーズで漢字の意味を絵で表現したり、硬貨で拓本をとって意匠から歴史を読み解いてみたりするなどのワークショップを通して、身近な物事から興味を喚起し、知識や理解を深めるための読書を推奨しています。

  2019年には、読んで知識を得るだけでなく、知り得たことを他者に伝えることを通して、自身の学びを深めるワークショップ「ウィキペディアタウン」もサポートしました。地域の方々にも協力をいただき、郷土について本で調べたことを、生徒達が自分なりにまとめ、オンライン百科事典Wikipediaに記載しました。いつか卒業して地域社会に出て行く生徒達の学びや読書の場を、図書館を拠点としつつも、より広い社会へと視野を拡げてゆくことで、「読みたい」「学びたい」気持ちをどこまでも育てて行けたらいいな、と、思っています。

続きを読む
1 / 2

関連記事一覧