『夢はつながる できることは必ずある!-ALSに勝つ』

谷川彰英/著

東京書籍/刊

本体1,400円(税別)

「生きること」を選ぶ勇気に込められた教育者としての生き様

 谷川彰英さんは4年前に突然ALSと診断された。手足が十分に動かず、発声も難しくなった。そのような状況の中、『ALSを生きる-いつでも夢を追いかけていた』と『日本列島-地名の謎を解く』の二冊の書物を相次いで著された。寺﨑昌男先生(立教大学名誉教授)は「驚異の出版」、小暮修也先生(明治学院前院長)は「奇跡の一冊」と評された。

「生きる」か「絶望する」かの二者択一において、谷川さんは「生きること」を選択された。そして「生きる」というのは「何かをし続けること」だと言われる。命のある限り執筆活動を続ける。「それが私の生き方」。しかしながら、これは極限の苦しみと悔しさの奥底で呻きと共に絞り出された「生への宣言」であることを、谷川さんは隠そうとはしない。

「ある日、痛みの余り車椅子にも乗れずベッドにも座れず仕事ができなかった時、初めて涙が流れ落ちた。涙を抑え切れずに妻に文字盤で伝えたのは「悔しい」の一言だった」。その痛みを背負いながら、自分の使命とは「本を書くことによって、様々な悩み・苦しみと闘っている人たちに生きる勇気と元気を届ける」ことだと語る。

谷川さんから、あらためて私たちが深く教えられることは、「教育とは子どもを通じての未来への語りかけである」ということである。

<辛い時には泣いてください。涙を流せば少しは楽になります。でも忘れないでください。流した一粒一粒の涙は小さいけれど、その中に「希望」の道筋が見えてくる、きっと>
本書に散りばめられた珠玉の言葉の数々は、まさしく未来を生きる者たちへのエールに他ならない。この生きることが苦しい時代に、谷川彰英という本物の「教育者」が与えられたことを、心から喜びたい。

(評・立教大学総長 西原 廉太)

(モルゲンWEB20220930)

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