『世界を変えた60人の偉人たち 新しい時代を拓いたテクノロジー』

東京電機大学/編

東京電機大学出版局/刊

本体2,000円(税別)

先人たちの業績や努力、挫折から学んで

 日常を支えるテクノロジーについて普段意識することもありませんが、いかに依存しているかを痛感させられたのは、千葉県を襲った台風による停電と、それに伴う情報手段の途絶でした。

 本書は東京電機大学の110周年記念の広報誌の企画を基に、大学生や理系分野に興味を持つ中高校生へ向けて編まれたものです。しかし読んでみると、偉人たちの知られざるエピソードは興味深く読者を選びません。

 古代から現代へと、それぞれの時代の転機となる発明が社会をどう変えていったのか、個々の伝記を読むだけではわからなかったつながりも見えてきます。貧しい家に生まれ働きながら学んだ偉人が多いことも驚きです。雷が電気であることを証明したフランクリンもその一人ですが、新聞発行で財を築き、政治家としても名を成した一方、アメリカ初の公共図書館を設立、数々の発明の特許は取らず社会に還元したことはあまり知られていないのではないでしょうか。

 すぐれた発明家、研究者がすべて名誉を手にしたわけではないことも知ることができます。原子爆弾を開発したオッペンハイマーは、意図に反して原爆が兵器として使用されたことを生涯悔やみ続け不遇のまま生涯を終えました。現代でも、環境問題、大量破壊兵器の開発など、科学技術の発展により引き起こされた多くの社会問題があります。これから科学技術を学ぶ人、時代を変えていく可能性を持った人たちに、先人たちの業績や努力、挫折から多くを学んでほしい、著者の真摯な思いが伝わってきます。

(評・袖ケ浦市立昭和中学校 学校司書 松井 恭子)

(月刊MORGEN archives2019)

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