• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

谷川 俊太郎さん(詩人)

 谷川俊太郎さんは言わずと知れた詩壇の大家だ。分かり易く情感豊かな言葉からつむがれる作品たちの不思議な暖かさに、誰しも一度は触れた憶えがあるだろう。活動は幅広く、作詞、絵本、エッセイ、脚本と多岐に渡り、どの世界にも大きな足跡を残している。哲学者で大学教授だった父の書斎から広がるように置かれた本に囲まれて過ごした幼い頃――、巨人に十代の歩みを訊ねた。

お父様は哲学者で大学教授。子ども時代はどんな環境でお過ごしに?

 ほかがわかりませんから比べようがないですけど、父が大学教授の教師をしていたこともあり、とにかく家の中は本だらけ。それにわりあい家庭的な人ではなかったので、今でも80年経った和室が残っているんですが、父はその書斎で仕事をし、ぼくたちのいる場所から少し離れた所で、子どもの頃はあんまり一緒にご飯を食べた記憶もないんですね。それに物書きですから父は朝起きるのが遅くてね。

小さな頃から本に囲まれていたわけですね

 だからぼくは本には、アンビバレントな感情があるんですよ、つまり好きと嫌いが一緒なんですよ。それで自分が物書きになって本に囲まれるようになっちゃったでしょう、だから時々、本にうんざりしちゃって(笑い)。

当時、子ども心に描いた夢は?

 戦争中でしたからね、われわれの世代は、それこそ「少年航空兵」とか決まっているというか、周囲がそう決めていてそれに合わせているという感じでしたね。

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