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澤井芳信さん(スポーツバックス社長)

 波乱の末の独立は混沌の様相の船出だった。上原さんを含め、2名のマネージメントを手掛けながら修士論文をやっつける、そんなてんてこ舞いの日常を、ひたすらに迎え撃つ。飛ぶように過ぎる毎日、だがふと気付くと、上原さんはワールドシリーズで優勝を果たし、事業は軌道に乗っていた――。

「独立心なんてホントは全くなかったですね(笑い)。したらしたで自由でいいですけど。でも大変なことも多いですよ」

 アスリートに依存するスポーツマネジメント事業は選手がいなければ成り立たない。しかも、スポーツはジャンルとして極めて幅が広いが、反面、フォーカスして振り抜けるものがない。結果、隙間産業のようなビジネスモデルにならざるを得ないのだという。「華やかだけど、泥臭いんです……」そう言って苦笑した。

 スポーツマンは、成功者ほどそれ以外をやってきていない人間が多い。オリンピックやワールドカップの熱狂も一瞬で、人々は消費するようにアスリートを忘れてゆく。巨額が動くアメリカンフットボールなどは、その多くが引退後に破産する。狂った金銭感覚は、その後の人生をも狂わせるのだ。選手たちのセカンドキャリアをどうマネジメントしていくか。彼らと自身を重ねつつ、どこまでも明るく朗らかに、澤井さんの目は情熱を湛え輝いている。

さわい よしのぶ 1980年、京都府生まれ。96年、京都成章高等学校入学、98年に春夏連続で甲子園出場。99年、同志社大学文学部社会学科入学。野球部に所属。2003年、社会人野球『かずさマジック』(現・日本製鉄かずさマジック)入団。選手引退後、スポーツマネジメント会社へ転職。13年、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科進学。株式会社スポーツバックス設立。上原浩治さん(野球)、荻原智子さん(水泳)、山本隆弘さん(バレーボール)、畠山愛理さん(新体操)ら10人のマネージメントをするほ他、スポーツ施設のコンサルティング等を行う。

(月刊MORGEN archive2019)

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