『モノのはじまりを知る辞典 生活用品と暮らしの歴史』

木村 茂光・安田 常雄・白川部 達夫・宮瀧 交二/著

吉川弘文館/刊

本体2,600円(税別)

未来のモノづくりのヒントを得ることにも

 最近巷で有名な、吸引力抜群、コードレス、あらゆるシーン対応の付属品付きの掃除機を購入した。今まで以上に掃除がしやすくなり大満足だ。家事は毎日のことなので、できるだけストレスフリーで行いたい。そんな風に、「より便利に、より快適に」と様々なものが発明され、現在まで様々な形に進化してきた。

 本書は掃除機の他、七十六項目の生活用品や暮しのシステムについて、誕生秘話や名前の由来、発明者など、四人の歴史学者が解説している。「日本で最初にラーメンを食べたのは誰か?」「鯛焼きの尻尾に餡を入れるべきか否か」など面白エピソードも満載で、随時登場する関連書籍や人物についても詳しく知りたくなる。図説や写真、参考文献も豊富で、調べ学習にも最適だ。

 一番印象に残ったのは電話だ。約百三十年前に通信手段として画期的な発明として重宝されたが、現在は、カメラ機能、情報検索、映像視聴、ゲームなどあらゆることが可能な形態に進化した。スマホは生活の一部となり便利になる一方で、依存症も引き起こしている。老若男女が使用する時代、データ流出など問題も多く、使用するには常に細心の注意を払いたいものだ。

 いつの時代も、人々のニーズが新しいモノやシステムを作り出し、私たちの暮らしを支えてくれている。本書は、あって当たり前と思っている日常のモノを見直し、未来のモノづくりのヒントを得ることができる。モノづくりであらゆる人を幸せにしたいと思う人には必携の本として勧めたい。

(評・茨城県立水戸工業高等学校 学校司書 水野谷 由紀子)

(月刊MORGEN archives2020)

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