【教育リポート】『死生学カフェ』
生前、文芸部に所属していた龍之介さんはいくつかの小説を遺していた。遺品整理の最中にそれを見つけた裕子さんは、やがて小説を通して息子と会話をするようになる。そのやりとりをネットの中でブログとして紡いでいると、そこに新たな息子の存在を見つけた気がして母はようやく息をついた。
裕子さんの体験を通して新たな死生観の地平を見ようと、つめかけた参加者たちを前に、まずは裕子さんはことの経緯を話し始めた。
大学進学を間近に控え、春休みの箱根旅行を楽しみにしていた息子の横顔――。突然、訴えた頭痛にも、次男の高校進学準備に手を取られ万全の対応を取れなかったという自責の念。それを救ったのは、たまたま目に飛び込んだ息子の遺稿『「後悔先に立たず」の先にあるもの』だった。参加者を前に読み上げる声と原稿用紙を持つ手がわななくように震える。