『十五少年漂流記(新潮モダン・クラシックス)』

ジュール・ヴェルヌ/著 椎名 誠、渡辺 葉/訳

新潮社/刊

本体1,944円(税別)

他者とのかかわり少年たちの力

 人を成長させる一番の要因とはなんだろうか。もちろん一つとは限らないが、そこに「他者とのかかわり」があるのは確かだろう。そしてそれが、″国籍も年齢も性格もバラバラ、頼りない15人の少年たちが無人島に漂流した″というようなありえないような状況において、極めて重要だというのは言うまでもない。また彼らわずかな年の少年たちの″他者とのかかわり″への意識は、大人のそれとは大きく異なっている。

 この小説の主人公であり、タイトルにも出てくる「少年」という単語が、具体的に何歳から何歳までを指すのかは分からないが、そう呼ばれる彼らは不思議な力を持っている。

 もしもこの物語の設定が「国籍も年齢も性格もバラバラな15人の成人男性が無人島に漂流した」であったなら、これほど私たちをハラハラさせる作品にはならなかっただろうし、少年たちのように無事母国へ帰ることも不可能だったに違いない。彼らが純粋で好奇心旺盛だったからこそ、絶望の中に希望を見つけることができたし、勇気と優しさ、知恵をふりしぼって自身の役割を果たせたのも、彼らが「少年」だったからだと思う。

 一見無力に見える彼らだが、その感性はなによりの武器であり、ときにそれは大人の何十倍もの力を生み出す。大人のいない少年だけの人間模様に″他者とのかかわり″の連続である集団の中で、死と隣り合わせの極限状態ながらも、仲間を思いやり、生に執着する少年たちの姿に、人間の本質を見ることができるはずだ。

 活力とスピード感の溢れる新訳は、新たな少年たちの冒険物語の金字塔を力強く打ち立てたと感じた。

(評・共立女子中学校3年 上村 くるみ)

(月刊MORGEN archives2015)

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