青い海と空のみちのく八戸から 波動はるかに 第1回 「虹っ子」と蕗の薹            

 その出逢いと物語から見つけたメッセージを込めて、『ハルくんの虹』の絵本が誕生した。作者は私だが、画は治史の長年の友人佐藤泰生氏が引き受けてくださり、カメルーンMengnjoさんや仲間が英語、ンズ語(カメルーン約250言語のひとつ)、フランス語で翻訳を担当し、4ヵ国語による芸術絵本が完成した。

 佐藤泰生氏は東京藝術大学大学院からフランス政府招聘でパリに留学、現在も国内外で油彩画壇を牽引する第一人者、絵本制作は初チャレンジだったが、色が踊り光が歌う唯一無二の一冊になった。

 治史は「この本は我々が産んだこどもだね。ボクは喜んでいます」と、絵本は我々の日常に息づいていた。ある日、「『ハルくんの虹』の原画を佐藤から我々に所有(もた)せてもらおう。ボクは君に何も残せないので、佐藤の『ハルくん』の画を君に贈りたい」と言い出した。我々の申し出は佐藤画伯にとどき、2022年10月23日、逗子に原画を受け取りに行くことになった。私は「虹っ子」を授かるという気持ちを授かり、母になるような気持ちで逗子にむかった。絵本作成の日々、佐藤氏はいつも大先生だったが、その日は「虹っ子」を我々に託する創造主のように神々しく想われた。「虹っ子」を抱いて、我々は海に向かっていた。湘南の海に戯れる人々はコロナ禍でマスクに覆われていたが、南仏のような甘やかな海風が漂い、煌めく光に満ち満ちて、水平線の彼方に「何か」新しい未来が見えた。

 その「何か」が、八戸に「多文化×多世代×多言語」で交流するサロンと「虹っ子」の原画を沢山の方々の見ていただくギャラリーを創りたいという微かな「夢」になって、私たちが北へ向かう決意となった。

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