
まとばゆうさん(ピアノ芸人)
「手短に名作シリーズ」――名作アニメや名作映画のあらましをその劇中曲にあわせ、ピアノで短く弾き語るお笑いネタだ。鍵盤を操るのはお笑い芸人・まとばゆうさん。輝くティアラと電子ピアノがトレードマークだが、もっとも目をひくのはやはり自由自在の指先だろう。作曲も手掛ける俊英の紡ぐ音符のはじまりとは……。夢を生きる力を聞いた。
音楽と暮らした少女時代
神奈川県横須賀市――大都市の喧噪に基地の異世界が織り混ざるどこか不思議な港町で、まとばさんは幼い時期を過ごした。公務員の父に専業主婦の母、優しい祖母……、穏やかに流れる時のなかで一人娘はのびのびと手足を伸ばす。
「少し人見知りはあったけど、音楽が好きで、人前に出るのも好きでした」
そうはにかむ若葉の記憶のはじまりは、5歳から通いはじめたヤマハ音楽教室の光さす部屋、あるいは祖母の嗜む民謡、日本舞踊の調べだろうか……。いずれにしても家は音楽に満ちていた。音楽が好き――。ランドセルを背にしても、少女のそんな気持ちは一向に薄れなかった。
小さい頃から運動は苦手だったし、ほかに目立った特技もない。それよりは得意な音楽の方がという気持ちもなくはない。それでもやはり「好きなものは好き」という思いが大きかった。