『実感する世界史 現代史 同時代的感覚で読む』

大橋 康一/著

ベレ出版/刊

本体1,800円(税別)

今後世界がどう動いていくかを考えるヒントに

 このところ、書店では高校で使用する日本史や世界史の教科書が売れているという話を聞いたことがある。

 中学・高校時代に歴史の時間では興味を示すことがなかった生徒たちも、卒業後「歴史」の重要性・おもしろさに気がつき、遅ればせながら大学生や社会人になって改めて「歴史」をやり直さなければと感じる人が多くいて、このような現象が起こっているのではないだろうか。そんなニーズにも対応できるのが本書だろう。

 教師として世界史の授業を受け持つ私にとっても、本書を読むことで歴史の裏側・駆け引きを知ることが出来るので、″歴史のおもしろさ″について、もっと生徒の興味を引き付ける授業を考えることにも役立つし、「そうだったのか」的な事件や出来事もあって読んでいて楽しい。

 本書は″冷戦″を一つの切り口としている。第一章「冷戦時代の先進国」で冷戦時代を俯瞰した上で、東アジア、東南アジア、西アジア、南アジアと話は進んで行くのだが、各国・各地域は別々に動いているわけではなく、相互に影響し合っていることを教えてくれる。また文中にもあった「歴史はくりかえす」のことばの通り、今後の世界がどう動いていくのかを考える糧となるはずだ。

 受験生にとっては、教科書だけで現代史を理解することは難しいが、この本と併用すれば理解しやすいだろう。また大学生や社会人にとっては、現代社会の成り立ちを理解するためのガイドブックとして読む価値がある。

(評・京華女子中学高等学校 教諭 川本 敏郎)

(月刊MORGEN archives2018)

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