『絵本学講座3 絵本と社会』

松本 猛/編

朝倉書店/刊

本体2,700円(税別)

絵本の魅力・絵本の力   

 本書は、絵本学講座全4巻シリーズ『絵本の表現』『絵本の受容』『絵本ワークショップ』に続く絵本と社会の関係性を明らかにした一冊。

 絵本が社会に果たそうとしている役割など、これまでの絵本の認識に新たな視点が加わる。絵本が大好きな人をはじめ、児童文学の授業や講演、絵本の読み聞かせグループの研修会などで活用が最適なシリーズ。4巻全ての目次をみると、章立て・項目共に興味深い内容が設定されており、通読し、手元に置き、必要のある時にその都度確認したい好著。

 それぞれの執筆者も是非読みたくなる魅力的な専門家が並ぶ。

 特に、これまで名作を送り出している絵本作家が多数登場し、熱く語られる創作の思いは作品以外で触れることの出来る作家の「ことば」として大変新鮮。知っている絵本や大好きな絵本作家の登場はファンとしては思いがけないプレゼント。

 これまで絵本の認識は、子どもたちが初めて出会う「お話しの世界」として知られていたが、成長してゆくにつれその後の人生で子どもたちが出合う様々な社会の出来事や疑問などをどう理解しどう乗り越えていけば良いのかなども絵の特性を発揮し、資料として社会的な役割をも果たそうとしていることなど、絵本の魅力や「絵本の持つ力」が専門家の立場から述べられているので新たな活用の広がりが子どもたちの活力となることを期待したい。

 写真絵本や絵だけの絵本、絵と文字のある絵本。カラー・線・タッチ、そのどれもが複雑な現代社会の人々の心に柔らかな陽射しを注ぐ。 

(評・千葉県立印旛明誠高校 司書 山中 規子)

(月刊MORGEN archives2015)

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