『1945←2015 若者から若者への手紙』

落合 由利子・北川 直美・室田 元美/共著

ころから/刊

本体1,800円(税別)

生き残ってしまった苦しみ心の痛みを70年抱き続けて

 戦後70年、戦争は忘れられつつあると日々感じている。毎年夏になると、新聞、雑誌、テレビでは色々な戦争特集が組まれるけれど、それはどれも遠い世界で起きた出来事のようで、どこか空々しさを感じさせる。

 『1945←2015 若者から若者への手紙』は15人の戦争体験者の証言と、彼らが現在の若者へ宛てて書いた手紙で構成されている。

 手紙を読むことで読者は今とは全く違った70年前の戦中の日本の生活を追体験できる。もし自分がこの70年前の日本に生きていたなら、そこで一体何を感じ、どう過ごしたろうか……、考えずにはいられない。それほどに15人の証言はどれもとても詳細で生々しく、読み進めるほどに、あたかも本当に自分がその時代のその場所にいるかのような錯覚すら感じられた。

 本を読みながら私はふと疑問を持った。それはなぜ証言者たちは70も前のことをこれほどまでに鮮明に憶えているのかということだ。これはつい5年前の記憶すらも危うい私には信じられないことだったが、本を読み終える頃にははっきりとその理由を理解できた。

 戦争体験者たちは戦後70年たった今でも、ずっとその痛みを抱き続けているのだ。大切な人を失った悲しみ、なぜ自分はあのときあの人を助けられなかったのかという無念、そして自分だけが生き残ってしまったという苦悩。70年の時が経ってもそれら戦争で刻まれた傷は決して癒えることはない。

 読み終えた本を閉じながら私は今の平和な日常を思った。この幸せな毎日が二度と奪われることのないように、悲惨な戦争への道を歩まないために、ひとりでも多くの若者がこの本と向き合って70年前の若者との対話をしてくれればと思う。

(評・明治学院高校1年 鈴木 遥)

(月刊MORGEN archives2015)

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